知恵蔵 「在宅輸液療法」の解説
在宅輸液療法
クローン病や潰瘍(かいよう)性大腸炎などの慢性的な消化器疾患で、長期間にわたり口から食べ物や飲み物を摂取できない患者や、大きな手術の後に栄養障害を来した患者、自宅でがんの治療を継続したい患者などが、容態が比較的安定している場合に適用される。
注入できる輸液としては、従来は病院内で常時、医師の管理下にある所でしか使えなかった高カロリー輸液や、消化器官の機能が十分でない人のために作られた成分栄養剤もある。無菌調剤室があれば、抗がん剤やモルヒネ製剤を調合して注入することも可能だ。
実施するためには、病院と、訪問診療・訪問看護、調剤薬局等から成る地域医療サービスとの連携が必須である。無菌調剤室を備えた薬局は都市部を中心に、徐々に数が増えてきており、カバーできるエリアも広がりつつある。実施体制が整ってきたことで、これまで在宅療養の受け皿がないために長期間の入院を余儀なくさせられていた患者も、退院して住み慣れた地域で療養を続けることができるようになった。
専用ポンプは、患者が購入することもできるが、病院からレンタルできるケースも多い。患者は、退院前からあらかじめ決めてあった調剤薬局や訪問看護ステーションへ医師の処方箋(せん)を提出し、定期的に輸液を届けてもらう仕組み。トラブルに対しては24時間受け付けの相談窓口も用意されている。併せて定期的に医師の訪問診療を受け、治療を継続していく。
(石川れい子 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報