電波を送るための電気的設備がある送信所の施設のうち、塔状の建築物をさす。通常、テレビやラジオ、無線通信などの電波を送るために使われ、複数の電波を送信している場合は集約電波塔ともいう。テレビ放送の電波を送信する電波塔をテレビ塔、ラジオ放送の電波を送信する電波塔をラジオ塔などとよぶ。テレビ塔とよばれるものも、実際にはほかの電波も送信する設備を備えたものが多いので、ほとんどの場合、電波塔と同義語である。
電波はさまざまな要因により干渉を受けやすく、建物に遮られたりすることもあるため、多くは送信区域全体を望む山の上に設置される。地形に起伏がない市街地に建てるときは、周囲の建物よりも高い自立式鉄塔を設置することが多い。日本の自立式鉄塔の電波塔は、高いものから順に(1)東京スカイツリー(高さ634メートル、東京都墨田(すみだ)区。2012年の開業時点で自立式鉄塔として世界一の高さ)。(2)東京タワー(333メートル、東京都港区)。(3)瀬戸デジタルタワー(245メートル、愛知県瀬戸市)。(4)福岡タワー(234メートル、福岡県福岡市)。(5)スカイタワー西東京(195メートル、東京都西東京市)。(6)名古屋テレビ塔(180メートル、愛知県名古屋市)。(7)さっぽろテレビ塔(147.2メートル、北海道札幌市)などである。
東京の電波塔は、東京タワーが1959年(昭和34)のテレビ放送開始以来使われてきたが、周辺に高層ビルが増えて電波が届きにくくなったことや、マルチメディア放送などの新サービス開始が要請されるなどの事態が生じ、これに対応する施設が必要になった。そこで、東京タワーの設備更新も含めて種々の方策が検討されたが、結果として新しい場所に新電波塔を設置することになった。設置場所は種々の候補のなかから、墨田区の東武鉄道車両基地跡地が選ばれ、2008年(平成20)に工事開始、2012年2月に竣工(しゅんこう)した。新施設名はいくつかの候補のなかから公募で東京スカイツリーと命名された。最初に展望台や商業施設部分が開業したのち、2013年5月にテレビジョン電波の正式送信が開始された。現在、東京スカイツリーはNHKと一部を除く民放の地上デジタルテレビ放送、FMラジオ放送、マルチメディア放送およびタクシー無線基地局などの業務に使われている。一方、東京タワーは1959年以来テレビ放送を受けもち、アナログ放送が地上デジタル放送にかわってからも送信業務を担ってきたが、2013年東京スカイツリーの開業とともにおもな業務をこれに譲った。現在は、災害などで東京スカイツリーが送信できない場合の予備施設としての機能を保存し、また放送大学のテレビ放送、一部のFM放送なども行っている。
[吉川昭吉郎]
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