地中の比較的浅い部分にある低温の熱エネルギー。地中熱は太陽エネルギーが地表近くの地中に蓄えられたものであり、地殻内部を熱源とする地熱とは区別される。一般的に地下10メートルの深さの温度は、その土地の1年間の平均気温と等しく、九州南部で20℃、北海道で10℃、東京や大阪では17℃程度で一定している。
季節や天候などの影響を受けて変化する外気温と温度が一定である地中熱の温度差をいかし、夏季は冷熱源、冬季には温熱源として、年間を通して安定的に利用できる自然エネルギーである。地中熱の利用には、熱交換の効率が高く、温度調節にも適したヒートポンプ(熱ポンプ)システムが一般的に採用されている。これは地中に掘削した井戸の中で熱交換を行い、地中熱の熱エネルギーを水や不凍液などに移動させ、それをくみ上げて熱を取り出す方法である。
ヒートポンプをはじめとして各種方式の地中熱利用は、アメリカやヨーロッパ諸国で1950年ごろから始まり、建物(ビル、住宅、農業用ハウスなど)の冷暖房や道路の融雪、温水プールなどに幅広く利用されている。掘削工事が必要なため建設時の導入コストが高いなどの理由で、日本ではこれまで敬遠されがちだった。しかし、地下水や地盤環境に対する影響をあらかじめ考慮する必要があるものの、地中熱は全国どこでも利用でき、電力消費や二酸化炭素の排出量も抑えられ、地球温暖化防止や節電の効果が高い。また、冷暖房時に熱を外気に放出しないため、ヒートアイランド現象の緩和策としても期待されている。2011年(平成23)までに地中熱ヒートポンプシステムを導入した施設の件数は累計990件にとどまるが、2012年に開業した東京スカイツリー地区や東京国際空港新国際線ターミナルビル(2010年供用開始)では本格的な地中熱利用設備が導入された。また、環境省が2012年に『地中熱利用にあたってのガイドライン』を発表したのをはじめ、国や地方自治体による補助金制度なども整備され、地中熱の本格的利用の条件づくりが進んでいる。
[編集部]
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