翻訳|heat pump
ヒートポンプともいう。外気や地下水,川水,海水,排水その他の低い温度の熱源から高い温度の熱源に熱をくみ上げる装置。暖房や加熱に利用される。温度T1の物体から熱量Q1を受けとって温度T2(T2>T1)の物体に熱量Q2を与えるためには仕事Lを必要とし,Q2=Q1+Lの関係がある。したがってεh=Q2/Lは熱ポンプの性能を示す指標となり,これを熱ポンプの成績係数という。T1,T2が定まっているときεhが最大となるのは,熱ポンプの作動流体が行う変化が断熱圧縮,等温圧縮,断熱膨張,等温膨張を繰り返す逆カルノーサイクルの場合であって,そのときεh=T2/(T2-T1)となり,T2/T1が大きいほどεhの値は小さくなる(ただし,T1,T2の単位はK)。例えば,T1=273K,T2=318Kの場合,εh≒7であり,理想的には仕事入力の7倍に相当する熱量をくみ上げられることになる。ただし実際には空気を熱源とする熱ポンプでは,外気温度0℃,温水温度45℃でεh=3程度が現状である。燃料の発熱量を1として石油ストーブのように部屋で燃料をたく場合,電気ストーブの場合,熱ポンプの場合の暖房方式を比較した場合,火力発電の発電効率をη,電動駆動熱ポンプの成績係数をεとすると,それぞれの加熱量の割合は1:η:εηとなる。η=0.3~0.4であり,かりにη=1/3とすると,ε>3であれば,熱ポンプによる暖房がエネルギー利用の面では優れていて,電気ストーブによる加熱がいちばん劣ることになる(ただし,機器の選択には機器の価格と燃料費,あるいは目的などが関係する)。
熱ポンプは吸熱および放熱の原理から蒸気圧縮式と吸収式に大別される。蒸気圧縮式熱ポンプでは,冷媒は蒸発器で外気や地下水,排水などからの熱を受け取って蒸気となり,圧縮機で圧縮されて圧力,温度が上昇した後,凝縮器で熱を冷却流体に与えて(あるいは放熱器で放熱)液化し,膨張弁を経て蒸発器入口に戻る。後者の吸収式熱ポンプの場合は,蒸発器で吸熱した冷媒を吸収剤に吸収させ,その溶液を昇圧した後に加熱して冷媒蒸気を発生させて凝縮器に導く。
1852年ころケルビンが空気を媒体とした熱ポンプを試作したといわれているが,その実用は1930年代に入ってからのことである。現在では家屋の暖房,給湯ばかりでなく,廃熱からの熱回収,園芸や魚類乾燥その他に広く用いられており,また熱ポンプの蒸発器側でスケートリンクの冷却を,また凝縮器側で温水プールや浴場の加熱を行うシステムは熱利用の面でも優れたものといえる。
→冷凍機
執筆者:斎藤 孝基
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
低温度の熱源から熱を取り出し、外から仕事を加えて高温の熱源に熱を与える機械。ヒートポンプheat pumpともいう。冷凍機、冷蔵庫と同類である。冷凍機などは低温の熱源の温度を下げるために用いられるが、熱ポンプは継続して低温熱源から熱を高温熱源にくみ上げるので、熱をくみ上げるポンプ、すなわち熱ポンプとよばれる。サイクルは熱機関を逆に動かすものに相当する。
熱ポンプは、室外の空気または冷水を低温熱源として室内のより高温の空気を高温熱源とし、低音熱源からくみ上げた熱で室内の空気を温める暖房装置として使用され、冷媒系統を切り替えれば冷水で冷却される室外の空気を高温熱源として室内の空気を低温熱源とし、室内から室外へ熱をくみ上げる冷房に利用できる。熱ポンプの原理は1850年W・トムソン(ケルビン)により提唱された。冷暖房用、溶液の濃縮用、自己蒸発式蒸発装置などに応用されている。
[吉田正武]
一般に,力学的な仕事を利用して熱を低温の物体から高温の物体に移す装置をいう.カルノーサイクルの逆操作がもっとも効率のよい熱ポンプのはたらきをする.熱ポンプは実際上,低温の物体から熱をとる冷凍機または高温の物体に熱を与える暖房機などとして利用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
「ヒートポンプ」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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