地方劇(読み)ちほうげき(その他表記)Dì fāng jù

改訂新版 世界大百科事典 「地方劇」の意味・わかりやすい解説

地方劇 (ちほうげき)
Dì fāng jù

中国の旧劇中,京劇などの全国的に影響力をもつ演劇に対し,限られた地域で愛好されるものを指す。この概念は18世紀中ごろ,雅部(崑曲)を花部(弋陽(よくよう),梆子(ほうし)等)と区別して優越させたのに始まるという。文化大革命前の統計で,漢族348種,少数民族28種,人形劇,影絵芝居63種を数える。旧劇は歌唱が重要で現代劇にも用いられる。その歌調は崑曲,弋陽,皮黄,梆子,柳子(せなぎ)の5系統よりきたとされる。歌唱形式から組歌式の崑曲,弋陽(高腔)とリズム型変奏歌調式の皮黄(京劇),梆子に独自の歌曲類をもつ柳子の3種に分けられるが,混成のものも多い。各系統の歌調がさらに諸地方の方言民謡,語り物,楽曲や舞踏と結合して多様な劇種を形成する。歌唱も男女役柄の異音域,裏声やダミ声の使用法,コーラスの有無などかなりちがう。伴奏には打楽器のみの高腔系から,胡弓を主とする京劇,梆子系,横笛の崑曲のほか,安徽清音戯の古箏や陝西郿鄠(びこ)の三弦もある。また舞踊性の薄い京劇に対し,崑曲,花鼓戯,採茶戯,花灯戯,二人転系などは濃厚である。雲南関索戯,湖南師道戯など隈取をせず面をつけるのもある。今日では,舞台言葉と歌唱以外は京劇の演出に類似するが,概して感情表現は型にはまらず江西九江高腔のごとくごく日常的な表情も見える。同じ型やみえを切るのも四川劇や湖南祁(き)劇など独自性をもった演出も少なくない。さらに現代劇を得意とする評劇や上海滬(こ)劇などがある。今世紀に入って広範な農民酷愛が着目され,社会教育,政治宣伝利器として大半が重要な役割を果たした。
中国演劇
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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