日本大百科全書(ニッポニカ) 「塗装工事」の意味・わかりやすい解説
塗装工事
とそうこうじ
建物や鋼構造物の防錆(ぼうせい)、防腐、防蟻(ぼうぎ)などの保守および装飾あるいは光線の調節などの目的をもって行われる工事。塗料と施工法の種類は多く、建造物の使用環境と目的によって定める。鋼構造物の塗装は防錆を第一の目的とする。一般に1回の塗装によって満足な性能を期待することは困難で、異なった性能の塗料を2~3種類使用して塗り重ねる。塗装順序によって下塗り、中塗り、上塗りに分類される。下塗り塗料は鋼構造物に密着して直接防食作用を行うので、さび止め塗料とよばれる防食性能の大きい塗料を用いる。中塗り塗料は下塗り塗料の防食性能を補い、かつ上塗り塗料との密着と必要な色相に仕上げるための中間補助的役割を果たす。上塗り塗装は外部環境と接するので、十分な耐暴露性と必要な美観、色調が得られる塗料が選定される。橋梁(きょうりょう)などの場合は通常、工場で下地処理と下塗りを施工して現場に送り出し、架設完了後、中塗り、上塗りを施工する。
コンクリートおよびモルタル部の塗装は、下地の乾燥、粗い表面のサンダー掛け、ひび割れ処理などを施してから行う。コンクリートおよびモルタルはアルカリ性であるため、耐アルカリ性の小さい油性系の塗料は適さず、一般に熱可塑性合成樹脂系のエマルジョン塗料を用いる。下塗り、中塗り、上塗りとも同じ材料を使用する。
木部塗装には油性系塗料と合成樹脂系エマルジョン塗料が多用される。素材の木目をみせる透明塗装の場合はワニスまたはクリヤラッカーなどを用いる。また、防火、防腐、防虫など特殊な性能をもたせた塗料もある。
塗装作業は一般に下地調整、下塗り、中塗り、上塗り、仕上げ塗りの順序で行われ、ていねいな仕上げを要する場合ほど塗装工程も増す。また、下地の乾燥が不十分であると塗膜の亀裂(きれつ)、はがれなどを生じやすいので、塗装の前に木材をよく乾燥させることがたいせつである。