塩蔵品(読み)えんぞうひん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩蔵品」の意味・わかりやすい解説

塩蔵品
えんぞうひん

畜肉、魚貝類、野菜などに食塩を加え、貯蔵性をもたせたもの。もっとも古くから行われている貯蔵食品。紀元前、フェニキア人やギリシア人により始められたという。日本でも1000年以上前からつくられており、朝廷への貢物に塩蔵魚が使われた。

[金田尚志]

貯蔵原理

食塩には殺菌力はないが、濃厚な食塩水中で細菌原形質分離をおこし、繁殖しにくくなる。また、食品中の水分が食塩により除去されると、細菌の繁殖に必要な水分が不足するため、腐敗が抑えられる。

[金田尚志]

塩蔵方法

散塩(ふりしお)法と立塩(たてしお)法および両者の併用法がある。散塩法は主として魚に対して行い、コンクリートのたたきの上に簀子(すのこ)を敷き、魚を並べて、塩をふりかける。この上にまた魚を並べ、山積みにし、莚(むしろ)で被い、数日置く。立塩法はタンクに食塩水を張り、魚を漬け込む。この方法は食塩溶液が均等に魚体へ浸透する。またこの際、食塩濃度を自由に調節できる利点がある。しかし、散塩法に比べ容器が要り、食塩も多く使うのが欠点である。一方、散塩法は食塩の浸透が不均一になりやすく、また含有油脂の劣化に起因する「油焼け」をおこしやすい。なお併用法は、タンクに魚を入れ散塩し放置すると、魚体からの浸出液により、立塩法となるものである。

[金田尚志]

食品の種類

魚貝藻類が多いが、とくにサケ、マス、タラニシンイワシサバサンマ、魚卵、クラゲモズクなどを用いる。畜肉は主としてハム、ベーコンの予備処理として行われるが、沖縄、鹿児島県では豚肉を塩蔵する。野菜類は漬物用のほか、加工原料用の貯蔵漬けのための塩蔵を行う。すなわち、ナス、キュウリダイコンナタマメシロウリなどを濃厚食塩水中に貯蔵し、福神漬け奈良漬け、からし漬けなどの原料とする。使用直前に流水中で脱塩する。

 食塩の過剰摂取は血圧を上昇させるとされているため、塩辛い塩蔵品は消費者の好みにあわなくなっている。そのため、最近の塩蔵品はいずれも用塩量が少なく、食塩のみでは貯蔵できず、冷蔵庫に入れる必要がある。したがって現在の塩蔵品は貯蔵食品ではなく、食塩は嗜好を増すため加えてあるとさえいえる。

[金田尚志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「塩蔵品」の解説

塩蔵品

 食塩を加えて貯蔵性を高めた食品.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の塩蔵品の言及

【水産加工】より


【水産加工技術史】
 生鮮魚介類はそのまま食用に供するほか,ひじょうに腐敗しやすいため先史時代にすでに素干し,煮干し,塩蔵などの加工品が作られていたようである。歴史時代に入り《風土記》《延喜式》などにはこの時代に利用された魚介類,水産加工品の記載があるが,素干し品,煮干し品,塩蔵品のほか酢漬,すしなども出回りはじめた。また水産物は調庸賦役の一つとして,するめ,干しアワビ,干しナマコ,干しワカメ,塩蔵アユ,塩蔵ブリなどが朝廷に納められた記録がある。…

※「塩蔵品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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