化学辞典 第2版 「多重極」の解説
多重極
タジュウキョク
multipole
点電荷 e1,e2,…の集まりを考え,その全電荷を
q = Σiei
で表す.電荷 ei の座標をri(xi,yi,zi)とし,分布の外にある点R(X,Y,Z)におけるクーロンポテンシャルを,|R| > |ri|として
1/|R| = 1/R
に関し展開すると,
と表される.ここで,
px = Σieixi,…
を成分とするベクトルp(px,py,pz)をこの分布の双極子モーメント,
Θxx = Σieixi2,Θxy = Σieixiyi,…
を成分とするテンソルΘを四重極または四極子モーメント,以下順次に高次の項に含まれてくる高次のテンソルを一般に多重極ないし多極子モーメントという.上式から,一重極q,二重極p,四重極Θ,…にもとづくポテンシャルは,距離Rの1乗,2乗,3乗,…にそれぞれ逆比例することがわかる.多重極のもっとも簡単な形式のものは次のようにしてつくられる.まず,一重極として点電荷eを考え,次にこれを任意の方向に移動させてその符号をかえると,生じた-eともとのeとの組合せが二重極となる.また,この二重極を任意の方向に平行移動させて,前と同じく電荷の符号を逆転させ,それとはじめの二重極との組合せを考えるとこれが四重極を与える.同様の操作を繰り返すことにより 2l 重極をつくり出すことができる.上のように電荷による場合を電気多重極,磁荷による場合を磁気多重極という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報