改訂新版 世界大百科事典 「多頭飼育」の意味・わかりやすい解説
多頭飼育 (たとうしいく)
畜産経営において,飼養する家畜の頭数を増し経営規模を大きくすることは,労働生産性の向上,飼料・生産物の流通の合理化,機械化など新技術の導入などの面で有利に働き生産費を低下させる。この目的のために家畜・家禽(かきん)を一つの経営で多頭数まとめて飼育することを多頭飼育とか多頭羽飼育という。何頭以上を多頭飼育と呼ぶかについては,種々の条件があり決めにくい。日本の畜産は,第2次世界大戦前は農家の副業として行われることが多く少頭数の飼育が普通であったが,昭和30年代の後半からは専業経営が増えて,乳牛では50頭以上,繁殖豚では100頭以上,肥育豚では数千頭,ニワトリでは数万羽といった大規模な経営が増加してきている。多頭飼育のためには土地・設備などの資本や相応な労働力といったものが必要であり,個人でこれらの条件が整えられないところでは何人かが協力する共同経営の形がとられている。
執筆者:正田 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報