大乗教徒の乱(読み)だいじょうきょうとのらん

改訂新版 世界大百科事典 「大乗教徒の乱」の意味・わかりやすい解説

大乗教徒の乱 (だいじょうきょうとのらん)

中国,北末の孝明帝が即位した515年(延昌4)の6月,渤海(山東省)の地に沙門法慶(ほうきよう)を指導者として起こった民衆反乱。法慶は冀州河北省)の人。みずから大乗と号し,〈十住菩薩〉李帰伯とともに5万余の民衆を率いて反乱を起こしたが,中央から10万の討伐軍が派遣されて4ヵ月後にようやく鎮圧された。大乗経典には,修行して菩薩にいたる位階が説かれているが,法慶は,位階は殺人の数によって高くなると説いて,人ひとり殺せば一住菩薩の位を授けるとともに,〈新仏出世して旧魔を除去す〉と唱えては,寺院経像を破壊し,僧俗を問わず殺戮を重ねた。いったい4世紀の前半に華北の地にも仏教はすでに浸透していたが,北魏の華北統一過程の中でいっそう仏教は保護され弘通していく。しかし北魏国家の庇護のもとで,洛陽の仏寺・仏塔の建立に象徴される繁栄を仏教が誇ったその裏で,国家財政は乱脈をきたし,民衆は国家の収奪に疲弊しはじめていた。一方,民間では村落を遊行する仏僧も現れ,固有の俗信と融合した信仰が民衆にゆきわたっていた。こうした事柄背景として北魏末の政治的にも経済的にも行き詰まった時代に,国家統制をはみだした民間の仏教信仰をエネルギーに,病んだ社会を変革しようとしたのが,大乗教徒の乱であり,唐の統一まで続く仏教徒の数々の反乱の先蹤をなすものであった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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