大南一統志(読み)だいなんいっとうし(その他表記)Dai Nam Nhat Thong Chi

改訂新版 世界大百科事典 「大南一統志」の意味・わかりやすい解説

大南一統志 (だいなんいっとうし)
Dai Nam Nhat Thong Chi

ベトナムのグエン(阮)朝の版図を漢文記述した地誌嗣徳18年(1865),翼宗の勅命で国史館が清国の勅撰書《大清一統志》にならって編述し,同35年(1882)に完成した。その後も編述が補続されたが,乙酉の役(1885)でハムギ咸宜)帝がフランス軍に敗れて蒙塵する際,稿本の一部が失われた。維新3年(1909)国史館総裁カオ・スアン・ズック(高春育)が稿本を収拾し,《大南一統志》17巻として板刻したが,すでに3地方に分割されてフランスの支配を受けていたため,板刻されたのは保護王国アンナン(安南)である中圻諸省の部分に限られ,北圻(トンキン)と南圻(コーチシナ)諸省の部分はその後も稿本で伝わっている。各省の状況を省別に,疆界,沿革,府県州の分轄,形勢,気候,城池,学校,戸口田賦山川,古蹟,祠廟陵墓,寺観,関汎,駅站,橋梁,市舗,人物,僧釈,土産などの条項に分けて述べており,記述に断片的で統一性に欠けるところがあるものの,19世紀末のベトナムの地理について貴重な資料を提供している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大南一統志」の意味・わかりやすい解説

大南一統志
だいなんいっとうし
Da Nan Yi Tong Zhi; Dai Nam Nhât Thông Chi

19世紀末に漢文体で書かれたベトナムの地誌。阮朝の嗣徳 (→トゥ・ドゥク ) 帝の命令編纂が始められ,嗣徳 35 (1882) 年に完成した。ベトナム全土に関する記述であるが,刊本となっているのは,中部ベトナムの部分だけである。

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