大向う(読み)おおむこう

改訂新版 世界大百科事典 「大向う」の意味・わかりやすい解説

大向う (おおむこう)

劇場用語。向う桟敷総称。現在では常設する劇場は少ないが,3階の客席後方に仕切られた一幕見の立見席をいう。この席は舞台全体が見やすく,何度も見るには好都合な安価なので常連客が多い。これから,転じて常連客のこともいう。大向うから適宜かけられる掛声は,舞台を盛り上げる。また,大向うの舞台に対する評価は,口コミとなって興行成績,役者の人気を左右する影響力を持つ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大向う」の意味・わかりやすい解説

大向う
おおむこう

劇場用語。最上階にある客席、またその席の観客。昔の劇場で2階の後方にあった「大入場」、現代では3階席や立見席がこれにあたる。大衆席であるため、俗受けをねらうことを「大向うを当て込む」というふうに日常語化しているが、反面、この席には芝居好きの見巧者(みごうしゃ)が多いので一種尊敬も払われ、その意味ではフランスのパラディparadisやドイツのオリンプスOlympsに通じ、日本でも天井桟敷(さじき)とよぶことがある。

[松井俊諭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大向う」の意味・わかりやすい解説

大向う
おおむこう

劇場用語。舞台向う正面奥の観客席,およびそこに席を取る観客をいう。料金は安いが,鑑賞眼の高い庶民の観客が集るので,高級な桟敷席よりこの席の反応が重視された。舞台の芸の要所要所で,ここから俳優屋号やその他さまざまのほめ言葉がかかり,芝居の進行に独特の興を添える。江戸時代には,率直で当意即妙な悪口も飛んだので,役者は大向うに気を使った。椅子席となった現代は,3階正面奥がこれにあたる。

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