掛声(読み)カケゴエ

デジタル大辞泉 「掛声」の意味・読み・例文・類語

かけ‐ごえ〔‐ごゑ〕【掛(け)声】

人に呼びかける声。特に、芝居競技などで、ひいきの者に呼びかける声。
勢いをつけたり、調子をとったりするために出す声。
新しいことを始めるときに、意気込んで出す声。転じて、近くある事を始めるという前触れ言葉。「機構改革も掛け声だけに終わる」
[類語]呼び声売り声

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精選版 日本国語大辞典 「掛声」の意味・読み・例文・類語

かけ‐ごえ‥ごゑ【掛声】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人に呼びかける声。
    1. (イ) 相手を励ましたり、同意、協力を求めたりする時に呼びかける声。
      1. [初出の実例]「かけ声を井の底からこたへけり」(出典:俳諧・文政句帖‐五年(1822)六月)
    2. (ロ) 演劇や競技などで、ひいきしている者に対してかける声援。
  3. 調子を整えたり、力を入れたりする時に発する声。
    1. (イ) 邦楽で、歌をうたったり演奏したりする時、曲節(ふし)を示す時に発する声。
      1. [初出の実例]「第一身なりをたしなみ、同第二にはかけ声を心に入てかけべし」(出典:太鼓聞書(1591))
    2. (ロ) 武芸やスポーツなどで、気勢を添えて相手に対する時に発する声。
      1. [初出の実例]「トウトウどこへどこへとのかけ声」(出典:咄本・鹿の子餠(1772)雪隠)
    3. (ハ) 重い物を運び、引き、投げたり、跳び、走りなどする時、力をこめたり拍子をとるために発する声。
      1. [初出の実例]「『コリャサコリャサ』の掛声は、さわたる厂(かり)か洋(おき)漕ぐ舩(ふね)」(出典:談義本・風流志道軒伝(1763)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「掛声」の意味・わかりやすい解説

掛声 (かけごえ)

動作を呼び起こしたり,2人以上の動作をそろえたり,あるいは動作に気勢を添えたりするために発する声。日本音楽ではかなり広く行われ,それが音楽の重要な一部分になっている例もある。芸術音楽では打楽器奏者や三味線奏者が発するものが大部分だが,雅楽や地歌などのように,掛声を用いないのを原則とする分野もある。掛声は,打楽器の場合には奏者自身が発する。能楽囃子や,歌舞伎,長唄囃子では掛声と楽器の打音とがほぼ対等に組み合わされて,リズムの型を形成するが,単に拍節の内部構造やそのリズム型の性格を示すにとどまらず,楽曲や楽曲部分の曲趣や級位と密接な関係を持ちつつ,高度に芸術的な表現として用いられる。いっぽう三味線奏者が発する掛声には,歌声部の担当者に演唱のきっかけを告げる,ほかの楽器奏者にリズムやテンポを指示して合奏を統率するなどといった機能もあり,またある程度様式化した装飾的な掛声もあるが,やはり曲趣の表現を助けている。民謡民俗音楽でも,上記のような声がしばしば発せられるが,それらは,むしろ囃し詞として扱われることが多い。また歌舞伎では観客が俳優の演技に対して客席から声をかけて雰囲気の盛上げの一翼をになうが,その声を掛声という。
執筆者:

聴衆や共演者があざやかな独奏をしつつある演奏家の技量を褒めたたえて,思わず神の名を呼んだり,肯定の意を込めた低いうなずきの声を出したりすることは,インド,西アジア,地中海域,とりわけ南スペイン,そしてアフリカ全体にひろく見られる。これは聴衆の演奏への積極的な参加を意味し,演奏家はこうした激励の意の掛声に反応して,ますます熱のこもった(即興)演奏を展開する。また音楽の演奏や舞踊の最中に女たちがかん高い震え声(ウルレーションurlationと呼ばれる)を持続的に発する習慣も西アジアから北アフリカにかけてしばしば見られる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「掛声」の意味・わかりやすい解説

掛声
かけごえ

日本音楽用語。楽器の演奏や歌い出しに先立って演奏者が発する声。拍子を取り,勢いをつける意味でかけるが,装飾的にも用いられる。同じ楽器を何人でも演奏する場合は,首席奏者がかけるのが普通である。種目によって掛声の音色あるいは用い方が異なる。特に能では譜面にも記されて音楽の一部となっており,掛声の種類と気勢を区別して打音を性格づけ,あるいは拍子感を一層明瞭にする。

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