動作を呼び起こしたり,2人以上の動作をそろえたり,あるいは動作に気勢を添えたりするために発する声。日本音楽ではかなり広く行われ,それが音楽の重要な一部分になっている例もある。芸術音楽では打楽器奏者や三味線奏者が発するものが大部分だが,雅楽や地歌などのように,掛声を用いないのを原則とする分野もある。掛声は,打楽器の場合には奏者自身が発する。能楽の囃子や,歌舞伎,長唄囃子では掛声と楽器の打音とがほぼ対等に組み合わされて,リズムの型を形成するが,単に拍節の内部構造やそのリズム型の性格を示すにとどまらず,楽曲や楽曲部分の曲趣や級位と密接な関係を持ちつつ,高度に芸術的な表現として用いられる。いっぽう三味線奏者が発する掛声には,歌声部の担当者に演唱のきっかけを告げる,ほかの楽器奏者にリズムやテンポを指示して合奏を統率するなどといった機能もあり,またある程度様式化した装飾的な掛声もあるが,やはり曲趣の表現を助けている。民謡や民俗音楽でも,上記のような声がしばしば発せられるが,それらは,むしろ囃し詞として扱われることが多い。また歌舞伎では観客が俳優の演技に対して客席から声をかけて雰囲気の盛上げの一翼をになうが,その声を掛声という。
執筆者:蒲生 郷昭
聴衆や共演者があざやかな独奏をしつつある演奏家の技量を褒めたたえて,思わず神の名を呼んだり,肯定の意を込めた低いうなずきの声を出したりすることは,インド,西アジア,地中海域,とりわけ南スペイン,そしてアフリカ全体にひろく見られる。これは聴衆の演奏への積極的な参加を意味し,演奏家はこうした激励の意の掛声に反応して,ますます熱のこもった(即興)演奏を展開する。また音楽の演奏や舞踊の最中に女たちがかん高い震え声(ウルレーションurlationと呼ばれる)を持続的に発する習慣も西アジアから北アフリカにかけてしばしば見られる。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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