大唐三蔵取経詩話(読み)だいとうさんぞうしゅきょうしわ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大唐三蔵取経詩話」の意味・わかりやすい解説

大唐三蔵取経詩話
だいとうさんぞうしゅきょうしわ

中国、南宋(なんそう)の小説。作者、成立年代とも未詳。3巻17章(第1章と第7、8章の一部を欠く)。同内容の『新雕(しんちょう)大唐三蔵法師取経記』とともに、日本の高山寺にのみ伝わる。白衣秀才に化けた猴行者(こうぎょうじゃ)(孫悟空(そんごくう))と深沙神(しんしゃしん)(沙悟浄(さごじょう))に助けられた三蔵法師一行は、鬼子母(きしぼ)の国や女人国、西王母の池などを経て、無事インドに至り、経を持ち帰った後、昇天する。説話人講談などを語る人)の台本とみられる本書は、文もつたなく長さも三十数葉のみだが、『西遊記説話が初めてストーリー性をもって現れたもので、『西遊記』成立史上、重要な意味をもつ。

[桜井幸江]

『太田辰夫訳『大唐三蔵取経詩話』(『中国古典文学全集14 西遊記 下』所収・1960・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大唐三蔵取経詩話」の意味・わかりやすい解説

大唐三蔵取経詩話
だいとうさんぞうしゅきょうしわ
Da-tang san-zang qu-jing shi-hua

中国の小説。作者未詳。3巻 17章。南宋もしくは元代に成立。唐代の高僧玄奘 (げんじょう。三蔵法師) が天竺 (てんじく) への道を踏破して中国に仏教経典をもたらした史実を小説化したもの。玄奘の西天取経の史実は唐代に早くも民衆のなかで伝説化し,宋代の講談の題材とされるうちに奇想天外な潤色が加えられていった。その講談の台本をまとめて刊行したのが本書で,すでに孫悟空や沙悟浄の前身が,猴行者 (こうぎょうじゃ) ,深沙神として登場する。文章,筋立てはきわめて稚拙であるが,呉承恩の傑作『西遊記』の原初の姿を示す貴重な資料。

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世界大百科事典(旧版)内の大唐三蔵取経詩話の言及

【西遊記】より

…唐初の三蔵法師玄奘(げんじよう)(602‐664)の西天取経の旅(629‐645)を骨子として,しだいに虚構化され,荒唐無稽な娯楽的要素が付加されて物語が形成されていった。13世紀南宋のころ,説話(講談)の人気演(だ)し物として語られていたらしいこの物語のテキストが,《大唐三蔵取経詩話》と題してほぼ完全なかたちで現存している。物語はいたって単純で,随行する動物の弟子も猴行者(こうぎようじや)と呼ばれる猿だけである。…

※「大唐三蔵取経詩話」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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