ロシアの詩人プーシキンの完成された唯一の中編歴史小説。1836年発表。プーシキンは18世紀に起こったプガチョフの反乱(1773~75)に深い関心を抱いて熱心に研究したが、その研究の文学的成果がこの作品である。プガチョフ事件を背景に、要塞(ようさい)司令官ミロノフ大尉の娘マリヤ、士官グリニョフとシバーブリン、そして当のプガチョフらをめぐるさまざまの事件がグリニョフの手記の形で描かれる。イギリスの作家W・スコット流の歴史小説と近代的な家庭小説とがみごとに融合している。文体は簡潔かつ正確で、プーシキンの散文作品の代表作の名に恥じない。また、プガチョフを極悪人としてでなく、きわめて人間的な、多分に同情に値する人間として描いたことも特筆される。
[木村彰一]
『『大尉の娘』(中村白葉訳・新潮文庫/神西清訳・岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈年少の〉小貴族に与えられる名誉は詩人にとって屈辱であった。世俗権力との衝突の中でプーシキンは歴史的な視野を拡大していき,ピョートルの功業をほめたたえつつ,その犠牲になったペテルブルグの小市民の悲劇を描いた叙事詩《青銅の騎士》(1833),ゴーゴリやドストエフスキーの〈ペテルブルグ物〉の先駆けといえる小説《スペードの女王》(1834),レールモントフの《現代の英雄》やトルストイの《戦争と平和》の原型ともなった歴史小説《大尉の娘》(1836)を書いた。妻とフランス士官G.ダンテスとのスキャンダルにまきこまれたプーシキンは,37年1月27日ダンテスとの決闘で致命傷を負い,2日後に37歳の生涯を閉じた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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