庁宣(読み)チョウセン

デジタル大辞泉 「庁宣」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐せん〔チヤウ‐〕【庁宣】

平安時代在京国守国衙こくが在庁官人留守所指示を下す文書国司庁宣
検非違使けびいし別当が出す公文書別当宣べっとうせん
院の庁から出す公文書。院の庁下し文。

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精選版 日本国語大辞典 「庁宣」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐せんチャウ‥【庁宣】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古文書様式一つ。国司庁宣の略。平安時代中頃から国司遙任制に伴って現われた様式で、在京の受領である守や介が国衙(こくが)の留守所に対して出した文書。「庁宣」と書き出す。一一世紀以降、国符に代わって多用されるようになった。
    1. [初出の実例]「国宣、阿蘇郡四境注文〈任先年注文庁宣也。承暦二年二月十四日、大介源朝臣花押〉」(出典阿蘇文書‐寛弘八年(1011)二月一一日・肥後国宣案)
  3. 院庁(いんのちょう)の下し文のこと。
    1. [初出の実例]「只今自女院下給牛原庄役夫工作料免除庁宣一紙、献上之」(出典:醍醐寺雑事記‐一二・仁平元年(1151)二月二五日・右大弁書状案)
  4. 検非違使別当の宣のこと。別当宣
    1. [初出の実例]「別当宣者即庁宣也」(出典:職原鈔(1340)下)
  5. 伊勢大神宮司庁の発する文書。
    1. [初出の実例]「庁宣、権禰宜師光。可早任宣旨、祭主下文、司符状、停止源義朝濫行〈略〉打損神人八人身及死門事」(出典:相模国大庭御厨古文書‐天養二年(1145)二月二八日・伊勢大神宮司庁宣案)

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改訂新版 世界大百科事典 「庁宣」の意味・わかりやすい解説

庁宣 (ちょうぜん)

平安時代以降の文書様式の一つ。広義には国司庁宣,大府宣,伊勢大神宮司庁宣など,差出書を〈庁宣〉と書き出す文書の総称であるが,厳密には国司庁宣のみを指す。11世紀から14世紀まで行われた国務文書の一つで,受領(ずりよう)の発する下文様文書。律令政治の地方行政制度である国司が行う政治・行政行為を国務というが,10世紀以降国務は従来の守・介・掾・目の四等官国司の連帯責任制から官長(守または介)の単独請負制へと変化する。国務を請け負う官長を受領というが,11世紀前半ころ,受領が郡司以下の在地への指令文書として使用しはじめたのが国司庁宣である。庁宣は,10世紀新任受領が在庁官人に発した新司宣の系譜を引くもので,差出書を〈庁宣〉と書き出し,位署はほとんどの場合受領の単署であり,位署の官職も〈大介〉と記すことが多い。11世紀後半ないし12世紀前半にかけて受領が在京化するにしたがい,在京受領から留守所への指令文書と化し,在地へは留守所下文で施行されるようになる。庁宣の登場によって,奈良時代以来公式の国務文書であった国符・国牒は,特殊な切符類を除いて姿を消すに至る。ところが知行国制が進展し,国務が受領から知行国主に移行するに伴い,庁宣も12世紀後半には国主袖判をもつものが現れ,13世紀には受領の署判が省略される例もでてくる。さらに国主の国宣の登場,守護制度の確立により,庁宣そのものの発給が減少し,南北朝時代南朝の国司が使用したのを最後に庁宣の時代は終わる。
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百科事典マイペディア 「庁宣」の意味・わかりやすい解説

庁宣【ちょうぜん】

古文書の一つ。〈ちょうせん〉とも。大宰帥(だざいのそち)がその管轄下に出す大宰府庁宣(大府宣)と,国守が出す国司庁宣とがある。平安時代には大宰帥・国守が任国にいかない遥任(ようにん)の制度が盛んになり,在庁官人(任地で実際の政務を行う者)や留守所にあてて出している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「庁宣」の意味・わかりやすい解説

庁宣
ちょうせん

平安時代中ごろから国司遙任(こくしようにん)制に伴って現れる古文書の一様式。国司庁宣のこと。任国に赴任せず在京したままの国守が、国の在庁官人(ざいちょうかんじん)・留守所(るすどころ)にあてて出した文書で、「庁宣」と書き出し、「大介」と署判した例が多い。国符(こくふ)にかわって用いられるようになる。在京する大宰帥(だざいのそち)(大宰府の長官)が管下に出した庁宣には、とくに大府宣(だいふせん)と書き出したものがみられる。

[酒井紀美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「庁宣」の意味・わかりやすい解説

庁宣
ちょうせん

平安時代中期以降,国司遙任制の発生に伴って行われた命令下達の文書形式。国守が下した国司庁宣と,大宰帥 (そつ) が下した大宰府庁宣 (大府宣) とがある。

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