日本大百科全書(ニッポニカ) 「大形有孔虫」の意味・わかりやすい解説
大形有孔虫
おおがたゆうこうちゅう
larger foraminifera
有孔虫の一グループ。有孔虫は原生動物(原生生物)の肉質虫類に属し、一般に大形有孔虫と小形有孔虫smaller foraminiferaとに分けられている。大形有孔虫は別に高等有孔虫higher foraminiferaまたは複雑有孔虫complex foraminiferaともよばれる。
大形有孔虫は、小形有孔虫と比較して、おおむね大きいものが多いが、単に大きさだけで区分することはできない。通常、数ミリメートルのものから10センチメートルに達するものまである。殻の多くは石灰質であり、内部は、成長するにしたがって順次形成された多数の室に分かれている。一般に小形有孔虫は、成長の様式が単調なので、外形からその内部構造を推定することができる。しかし大形有孔虫は、複雑有孔虫という名の示すように、多くの場合、その内部構造はきわめて複雑で、外部形態だけで内部構造を知ることはできない。殻の外形、表面の装飾などの外部形態の観察とともに、通常、薄片をつくり、中央を通った旋回軸に直角あるいは平行な断面や、横断面に平行な断面の顕微鏡下での観察によって、同定、分類を行う。外形は円盤状ないし凸レンズ状のもの、球形に近いもの、円錐(えんすい)状のものなどさまざまである。
古生代の地層から新生代第四紀完新世(沖積世)の地層まで産出する。進化による形態の時代的変遷は、産出する地域に偏りがあるものの、古くから地層を対比するうえでの重要な手掛りとされてきた。現生種のほとんどは暖かい浅海に生息している。化石種についても、ともに産出する化石の組成やその産状などから、温暖な浅海に生息していたと考えられている。
[谷村好洋]
『半沢正四郎著『大形有孔虫』(1973・朝倉書店)』▽『日本古生物学会編『化石の科学』(1987・朝倉書店)』▽『福田芳生著『化石探検PART1 ストロマトライトから穿孔貝まで』(1989・同文書院)』