改訂新版 世界大百科事典 「太陽物理学」の意味・わかりやすい解説
太陽物理学 (たいようぶつりがく)
solar physics
宇宙的環境下にある太陽という自己重力系ガス球を物理的に研究する天文学の一分野。現在では,太陽面で見られる諸現象の奥に存在する法則を観測事実に基づいて追究する学問である。太陽コロナは,有史以前から皆既日食の機会に見られていたが,近代的な太陽の研究はG.ガリレイが太陽黒点を自作の望遠鏡で観測したときに始まるといえる。これは黒点数の周期的変動の発見およびこれをひきおこすもととなる太陽内部における大きな対流や磁場との相互作用の研究となる。一方,吸収線の発見は,分光学,量子力学,熱力学,流体力学,プラズマ物理学などの発展とともに,諸現象の知識を一挙にひろげて,太陽の自転,微分回転,対流などの運動と,太陽中心部で発生したエネルギーの流れと磁場との相互関連の研究となっている。また,太陽の固有振動の発見は,太陽中心部の構造の研究につながっている。さらに太陽風が及んでいると考えられている太陽系の端までも研究領域となってきている。
執筆者:日江井 栄二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報