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太陽電波 たいようでんぱsolar radio emission

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

太陽電波
たいようでんぱ
solar radio emission

太陽の放出する電波太陽から電波が出ていることが明らかになったのは 1945年である。波長は 1cmから 20m。太陽からの電波は,静かな太陽の放出する成分と活動期の太陽の放出する成分に分けられる。静かな太陽の放出する電波は,太陽の電子とイオンが衝突して出る熱的なもので,そのうち波長数mの電波は 100万度のコロナから,波長数 cmの電波は,温度約1万度の彩層からくるものである。太陽活動期の電波は,ゆっくり変化する成分,ノイズ・ストームおよびアウト・バーストと呼ばれる成分に分けられる。ゆっくり変化する成分は,通常黒点に付随し,黒点の上空数万 kmに発生するコロナ凝縮中から出るもので,数ヵ月間継続する。ノイズ・ストームは,数時間から数日電波強度が平常の数倍から 100倍になるもので,太陽表面から太陽半径程度離れたコロナ中で起る。アウト・バーストは,電波強度が数秒から数時間平常の数万倍ほどになる現象で,X線および光学的に見えるフレアに引続いて起る。バーストの継続時間とスペクトル変化の様子から5つの型に分類されている。その原因は,光速に近い速度に加速された電子が磁場の中で旋回するときに出すシンクロトロン放射およびプラズマ振動などによる。

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デジタル大辞泉の解説

たいよう‐でんぱ〔タイヤウ‐〕【太陽電波】

太陽から放射される電波

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百科事典マイペディアの解説

太陽電波【たいようでんぱ】

太陽から放射される電波。地上では波長1mm〜30mの範囲が観測可能。静常太陽の放射は全波長域にわたり,強度は時間的に不変で,そのうちメートル波はコロナから,センチメートル波はおもに彩層から出る。

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世界大百科事典 第2版の解説

たいようでんぱ【太陽電波 solar radio emission】

太陽の放射する電波をいう。太陽が電波を出しているかもしれないということは,1893年にエーベルトH.Ebert(1861‐1913)によって指摘されていたが,観測技術が未発達だったため測定されなかった。1942年になって初めてイギリス軍のレーダー実験中に発見されたが,軍事上の機密とされ,本格的な研究が始まったのは第2次世界大戦後である。太陽は広い波長域に電磁波を放射しているが,波長が約0.1mmより長い電磁波を太陽電波と呼ぶ。

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大辞林 第三版の解説

たいようでんぱ【太陽電波】

太陽が放射している電波。地上では電離層の影響を受けない波長1ミリメートルから約20メートルが観測されるが、それ以上の波長は人工衛星から観測される。電波を放射しているのは光球の周囲の高温な大気中のコロナ・彩層などのほか、フレア発生の場合などもある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

太陽電波
たいようでんぱ

太陽からは広い周波数帯域にわたって電磁波が放射されており、電波もその一部である。電波の放射はおもに太陽大気中の電子の加速度運動によるものである。
 太陽表面は光球とよばれ、温度は約6000K(ケルビン)である。その上空には薄い1万Kの彩層、さらにその外には100万Kのコロナがある。太陽はおもに水素からなっており、これら高温の太陽大気中では電荷をもった電子(-)と陽子(+)が離れたプラズマ状態になっている。この電子が陽子と衝突したり、磁場のなかを螺旋(らせん)運動したりすると、その加速度のために電波を放射する。また、太陽表面には黒点があり、強い磁場を伴っているので、強い電波を放射する。このような電波放射機構を用いて、太陽大気や黒点付近で発生する爆発(太陽フレア)の研究が行われている。
 太陽電波を観測する装置(太陽電波望遠鏡)は大きく二つに分類することができる。ラジオメーターと電波写真儀である。ラジオメーターは、太陽全面から放射される電波の強度を測定する装置で、パラボラアンテナ(回転放物鏡アンテナ)と受信機からなり、比較的簡単に製作でき、観測も容易である。さまざまな周波数で電波強度を観測し、太陽フレアで発生する高エネルギー電子の研究に利用される。連続した周波数で観測できるものをスペクトロメーターとよぶ。電波写真儀は、電波写真を用いて太陽面上の電波強度の分布を観測する望遠鏡である。細かく観測するためには分解能のよい装置が必要である。望遠鏡の分解能は観測する電磁波の波長と望遠鏡の口径の比で決まるので、光に比べて波長の長い電波では非常に大きな口径の望遠鏡が必要となる。しかし、数百メートル以上におよぶ口径の電波望遠鏡は実現がむずかしいので、小口径のパラボラアンテナを数百メートルにわたって配置し、受けた電波を干渉させて実質的に数百メートルの望遠鏡を合成する。これを電波干渉計とよぶ。これにより、時々刻々変化する太陽表面の電波強度分布を観測することができる。
 太陽電波の分野において、日本は世界の最先端の観測装置を有し、研究をリードしている。1992年(平成4)から稼動している野辺山(のべやま)電波ヘリオグラフは、口径80センチメートルのパラボラアンテナ84基を、東西490メートル南北220メートルのT字型に配置した電波写真儀で、17ギガヘルツと34ギガヘルツで1秒間に10セットの電波写真を撮像することができる。電波だけではなく、人工衛星によるX線や紫外線観測データ、地上望遠鏡による光の観測データなどを総合的に解析することにより、太陽の研究が進められている。[柴崎清登]
『西村史朗・海部宣男編『現代天文学講座 第11巻 宇宙の観測1――光と電波による観測』(1981・恒星社厚生閣) ▽桜井邦朋著『科学の発見はいかになされてきたか――宇宙物理学者の夢と欲望』(1997・日本評論社) ▽R・ラング・ケネス著、渡辺堯・桜井邦朋訳『太陽――その素顔と地球環境との関わり』(1997・シュプリンガー・フェアラーク東京) ▽前田耕一郎著『電波の宇宙』(2002・コロナ社)』

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