日本大百科全書(ニッポニカ) 「女性警察官」の意味・わかりやすい解説
女性警察官
じょせいけいさつかん
女性の警察官。日本では1946年(昭和21)3月、GHQ(連合国最高司令部)の意向により警視庁で約60人が採用されたのが最初である。その後、しだいに採用が増加した。当初、女性の警察官は、防犯、交通警察の分野を中心に活動していたが、その後、職務範囲がしだいに拡大され、少年補導、女性の留置・保護、広報等の分野のみならず、犯罪捜査、鑑識活動、暴力団対策、警護、情報分析、レスキュー、ヘリコプター操縦等の幅広い分野で活動している。また、これら女性の警察官以外にも、一般職として、55年には非行少年の補導等を専門に行う女性の補導員(婦人補導員)が、70年には交通違反の取締り等を専門とする女性の交通巡視員(婦人交通巡視員)が採用されることとなった。
ところで、日本では、女性警察官は長らく「婦人警察官」とよばれてきたが、警察庁では1999年(平成11)11月から「婦人警察官」の呼称の使用をやめ、「女性の警察官」「女性警察官」の呼称に変更した。警視庁でも99年6月から同様の変更を行っている。検討の過程では「婦人警官」「婦警」という呼称が定着しているので変更の必要なしとの声もあったようであるが、男女共同参画社会への志向や男女格差是正に向けた世論の高まりなどにより変更が行われたものであろう。なお、「婦」の字義は、「箒(ほうき)」で「祭宮の清掃・管理にあたる女」の意であり、これが「一家を切り盛りする女」という意味になったということである。「婦人」の用例には「家」「男」への隷従を含意することもあり、また、既婚者など限定的な意味合いもあるところから、斥(しりぞ)けられたものであろう。
2000年4月現在、全国の都道府県警察には、警察官約8500人、交通巡視員、少年補導職員等の一般職約1万2300人の女性が勤務している。また、女性警察官の昇進、教養、給与、勤務条件等については、基本的には男性と同様の取扱いがなされており、警視や警部等、上位の階級の女性警察官も増えてきている。
また、女性を警察官として最初に採用したのは、アメリカ・ロサンゼルス警察であるといわれているが、今日では、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等の欧米諸国をはじめとして、世界の多数の国々で採用されており、男性警察官とともに幅広い職務に携わっている。
[小松 進]