葛西善蔵(かさいぜんぞう)の出世作。1918年(大正7)3月の『早稲田(わせだ)文学』に発表、24年新潮社刊の同名の短編集に収録。小説家の小田が、金策のために帰郷した妻からの音沙汰(おとさた)がないまま、家を追い立てられ、2人の子をつれて夜の街にさまよい出る話。ひたすら「休息」を欲する父と、かれんな子の無邪気さがみごとなコントラストをなして描き上げられている。葛西の「悪生活」がうかがわれるが、その悪生活からでも感興を得て小説家たらんとした破滅志向や、香典返しのエピソードにみられる特異な被虐意識など、この作家の創作の方法を考えるうえで重要な作品。
[榎本隆司]
『葛西善蔵著『椎の若葉・湖畔手記他9編』(旺文社文庫)』▽『谷崎精二著『放浪の作家 葛西善蔵評伝』(1955・現代社)』
敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...