定家仮名遣(読み)ていかかなづかい

精選版 日本国語大辞典 「定家仮名遣」の意味・読み・例文・類語

ていか‐かなづかい ‥かなづかひ【定家仮名遣】

〘名〙 鎌倉時代藤原定家が定めたといわれる同音のかなの使い分け。定家の作と伝える「下官集(げかんしゅう)」の「嫌文字事」の条に、「を」「お」、「い」「ひ」「ゐ」、「え」「ゑ」「へ」の三類八字についてその用い方が示されている。のち、南北朝時代行阿(ぎょうあ)がこれに「わ」「は」「ほ」「う」「ふ」「む」を加えて、「仮名文字遣」を著わしたほか、定家を祖述した多くのかなづかい書があり、これらを総称していう。江戸時代まで主として歌学の方面での規範とされた。定家は、古典書写の際にこの原則を立てたと見られるが、その内容は平安時代用例とは異なるものがあり、また、「を」「お」については、語のアクセントを書き分けの基準としたと論ぜられている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「定家仮名遣」の意味・わかりやすい解説

定家仮名遣
ていかかなづかい

行阿 (ぎょうあ) の『仮名文字遣』 (1363以降と推定) に示されたかなづかいをいう。これは,元来藤原定家が『下官集 (げかんしゅう) 』で定め用いたかなづかいを基に,行阿が増補したもので,行阿仮名遣ともいわれる。定家は古典の実例に基づくことを原則としたが,「を」と「お」については,アクセント高低によって「高」は「を」,「低」は「お」と書き分けたと推定されている (例:桶〈おけ〉,手桶〈てをけ〉) 。行阿は,この書き分けの規則にのっとりながら,新たに除外例などをあげた。このことから,南北朝時代にアクセント変化の生じたことを示す資料ともなっている。このかなづかいは,歌人定家の権威に支えられて歌人を中心に通用した。のちに契沖により,平安時代中期以前のかなづかいからの逸脱が指摘され,国学者を中心に契沖の歴史的かなづかいが広まったが,なお一部の人は定家仮名遣を信奉した。

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