改訂新版 世界大百科事典 「客家語」の意味・わかりやすい解説
客家語 (ハッカご)
中国,広東省梅県方言に代表される中国語方言群。広東東部および江西,福建の隣接部一帯に話されるほか,台湾を含む南中国に広く散在する。使用人口は推定3700万。その顕著な字音特徴は古全濁声母の無条件無声有気化であるが,これは江西の贛(かん)諸方言にも見られ,贛客家を一つに分類する考えもある。客家の華北からの移住は比較的新しく,〈客〉の呼称は土着先住民に対する〈よそ者〉を意味する。そのためか,客家の分布形態は他方言地域の山地に多く分散する点で独自であり,他の漢族から特異視されることがある。一方,客家間では〈中原〉華北文化に対する史的同定志向が顕著で,その精神的団結力は〈崇正会〉(客家の団体)の国際的広がりにも見られる。いずれにしろ客家語の形成は,他の華南方言より後に南下した北方中国語を母体とし,それに先住方言や他言語の何らかの影響が考えられる。
執筆者:辻 伸久
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