中国の標準語に対する旧式の呼称。中国語(漢民族の言語という意味で「漢語」ともいう)は、方言の差異が大きいが、呉語(上海(シャンハイ)語)、福建語、広東(カントン)語など南方の諸方言に対し、主として揚子江(ようすこう)以北の広い地域に広がる北方方言は、内部の相違が比較的小さい。南方方言と北方方言との差異は日本語の沖縄方言と本土方言との差異に、北方方言内部の差異は本土方言内部(東京と大阪など)の差異に例えられよう。この北方方言に基づく標準語的中国語を清(しん)朝時代に官話(公用語の意)とよび、そのなかでもとくに北京風の発音によるものを北京官話と称した。南方中国において、官話は、北京の朝廷から任命される官僚が用いるものであったため、「役人ことば」の含義を生じ、英語ではmandarin(中国の官僚)にちなみ、そのままMandarinと訳する。歴史的に中国の政治・文化の中心は北方にあり、『水滸伝(すいこでん)』『西遊記』『紅楼夢』などの白話(はくわ)小説(口語的文体による小説)も北方方言で書かれて官話普及の母胎となった。北京官話は、中華民国時代には「国語」とよばれ、中華人民共和国では「普通話」とよばれて、学校教育などにより、いっそうの普及が図られている。テレビ、ラジオが「普通話」によるのはもちろんである。かつては南京(ナンキン)方言に基づく南京官話が揚子江下流地域に勢力をもち、江戸時代の唐通事(中国語の通訳官)や白話小説の愛好者が「唐話(とうわ)」として学んだのも南京官話風の中国語であったが、明治維新後に清朝との国交が開かれるに及んで、北京官話の学習が重んぜられるようになり、今日、中国語として日本人が学ぶのもその系統を引く「普通話」にほかならない。
[平山久雄]
『詹伯慧著、樋口靖訳『現代漢語方言』(1983・光生館)』
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…華南の各地に〈正音書院〉を立て,《正音摂要》《正音咀華》などの手引書がつくられた。民国に入ると,国語運動がおこり,官話にかわって〈国語〉という名称が生まれるが,北京官話,官話の名称は依然として使われた。人民共和国が成立してからは,北京官話は〈普通話〉へと成長した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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