宣伝広告産業(読み)せんでんこうこくさんぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宣伝広告産業」の意味・わかりやすい解説

宣伝広告産業
せんでんこうこくさんぎょう

広告主と広告媒体企業の間に介在する広告代理業(店)が両者に提供するサービスを通じて営利活動を営む事業。

その性格

現代の宣伝サービス産業は、巨大化した社会的生産(大量生産)に対応した社会的消費(大量消費)の実現、より具体的には、不特定の大衆または限られた人々(分衆ないし小衆)に製品やサービスの差別化(A社の製品が同業他社の製品とさまざまな点で異なることを強調すること)の伝達を通じて、商業活動の拡大=販売促進を実現し、諸資源の社会的規模でのより効率的な利用を図ることに、その社会的機能を有している。資本主義発展が寡占体制に移行し、企業が価格以外の手段によって顧客を引き付けようと競争(非価格競争)する際、広告の果たす役割は大きい。1984年(昭和59)の日本の広告費の総額は2兆9155億円で、同年の日本の防衛予算(2兆9346億円)に匹敵する市場規模を有している。

[殿村晋一]

宣伝広告業と新聞

広告代理店は17世紀初頭にヨーロッパで始まり、19世紀のアメリカで本格的展開をみせた。イギリスのレーネル父子(1812開業)、アメリカのV・B・パーマー(1841)などによる広告代理店はいずれも新聞スペース業務newspaper agencyを営み、新聞社から手数料を受け取っていたが、1865年に創業したG・P・ローエルは、各新聞社から新聞スペースを大量に買い取り、これを広告主に小売りするスペース・ブローカーを営んだ。日本初の広告代理店、内外用達会社(1873)、これに次ぐ弘報(こうほう)堂(1886)、広告社、三成社(1888)、万年社(1890)、博報堂(1895)、日本広告株式会社(1901、後の電通)などはいずれもスペース・ブローカーであった。

[殿村晋一]

現代の広告代理店

第二次世界大戦後の広告代理店は、媒体企業への広告主の選択を通じて媒体企業より手数料を受け取り(テレビ、ラジオ、新聞は15%、雑誌は20%)、広告主に対しては、広告媒体の選択に加えて、広告実施に必要な市場調査、広告の企画立案・製作などのサービスを提供し、その代価として15%あるいはそれ以上のフィーを広告主から受け取っている(フィー制度)。マスコミ四媒体の発展、マーケティング技術の発展により、アメリカを先頭に、大手代理店はいずれも広告サービスの科学化・多角化を図り、優れた情報収集能力と商品企画力を売り物に、製品計画、SP(セールス・プロモーション)、流通政策、文化イベントの企画、PRパブリック・リレーションズ)などを通じて企業のマーケティング戦略全体にまでサービスの枠を広げている(アドバタイジング・エージェンシーからマーケティング・エージェンシーへの業務拡大)。さらにサービス範囲を公共部門から政治の領域にまで拡大したり、CAPTAIN(キャプテン)、CATV、VAN(バン)、放送衛星、光通信などニュー・メディア部門への参入を図るなどコミュニケーション・エージェンシーへの脱皮を急いでいる。1984年世界ランキングで、日本最大手の電通は、収入でアメリカのヤング&ルビカムに次ぎ世界二位、取扱高で一位。博報堂は同じく14位、15位である。

[殿村晋一]

『内川芳美編『日本広告発達史』上下(1980・電通)』『山本武利著『広告の社会史』(1984・法政大学出版局)』『八巻俊雄・梶山皓著『広告読本』(1983・東洋経済新報社)』

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