寡占規制(読み)かせんきせい

改訂新版 世界大百科事典 「寡占規制」の意味・わかりやすい解説

寡占規制 (かせんきせい)

寡占市場においては,資源配分上のロスが生ずるのみならず,企業がとくにカルテルによらなくとも互いに競争を回避して,容易に同一行動を取るようになることが理論的に指摘されており,自由競争の政策上は無視しえない弊害が存する。その根本的解決をはかろうとするならば,寡占企業を分割する等の手段を用いて,市場構造を競争的なものに変革する以外にはない。しかし,このような手段は,ある意味で競争的自由企業経済体制の不可欠の前提である私的所有制度中枢を変革するものであり,容易には実現しえない。日本の独占禁止法は,他に例を見ない〈独占的状態に対する措置〉の規定(2条7項,8条の4)を有し,一定の市場成果の存在を前提にして,寡占的市場構造下の大企業の分割を命じうるものとなっている。しかしその性質上,この規定の運用は非常に困難とされ,現実の寡占規制としては,むしろ寡占企業のカルテル類似行為を厳しく規制することが有効と考えられている。その意味では,〈不当な取引制限〉の禁止(3条)と,それに該当しない寡占企業の同調的行為に対する規制である,同調的値上げの報告義務(18条の2)とが重要である。後者は,年販売額300億円以上の事業分野を対象にし,そこで主要業者が3ヵ月以内に同一ないしは近似の額(率)での値上げをなした場合に,値上げの理由公正取引委員会に報告させるという制度である。事業者のあげる理由につきどこまで公正取引委員会が立ち入って検討をなしうるか等,理論的には必ずしも十分に明白にされていない点も残っているが,争いを好まないという日本の企業体質を考えるならば,この制度に一定の牽制効果はあると評価しえよう。
寡占
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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