不当な取引制限(読み)ふとうなとりひきせいげん

共同通信ニュース用語解説 「不当な取引制限」の解説

不当な取引制限

独禁法3条で禁止されている。事業者が相互に連絡を取り合い、商品の価格や生産数などを取り決める「カルテル」や、公共工事物品公共調達に関する入札で、事前に受注業者や価格を決めてしまう「入札談合」が対象となる。違反した場合、個人は5年以下の懲役または500万円以下の罰金法人は5億円以下の罰金と定められている。公正取引委員会は悪質で重大な違反行為と判断すれば、検事総長に告発する。

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改訂新版 世界大百科事典 「不当な取引制限」の意味・わかりやすい解説

不当な取引制限 (ふとうなとりひきせいげん)

独占禁止法が規制の対象としている行為類型の一つ。主要な要件は,事業者が他の事業者と共同して,その事業活動を相互に拘束しまたは遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することである(独占禁止法2条6項)。端的にいえば,合意によって競争を制限するいわゆるカルテル行為である。制限される競争の態様によって,価格,生産制限,市場分割等々の各種の〈不当な取引制限〉が存在する。

 〈公共の利益に反して〉という要件の解釈をめぐって,ここにいう公共の利益を自由競争秩序の維持そのものを意味すると解し,明文の適用除外を受けない限りすべてのカルテルは反公共性を持つと主張する立場と,単なる自由競争秩序の維持を超えたより広い立場からこれを理解し,適用除外立法がなくとも公共の利益に合致するがゆえに適法と判断されるべきカルテルが存在すると主張する立場とが古くから対立していた。第1次オイル・ショック(1973)時の通産省行政指導にからんでなされた,石油カルテル事件の最高裁判決(1984)ではこの点が重要な争点となったが,判決は中途半端なもので,総論として,原則論としての前説を肯定しつつなお例外的に後説が妥当する場合のあることを認め,具体的な事件の解決においては違法なカルテルの成立と被告人の有罪とを認めるものであったため,今後もこの解釈論上の争いは続くことが予想される。またカルテルの違法性について企業の認識が高まった今日では,公正取引委員会が,要件の中心をなす合意の存在を直接に証明することはほとんど不可能であるため,これを直接に示す証拠がなくとも,事業者間の事前の意思の連絡調整があったことと,その結果であることが合理的に推定される事後の行動の一致とが証明されるならば,合意の存在は間接的に立証されたものとして扱われる。違法なカルテルに対しては,協定の破棄を中心とする排除措置が命ぜられるほか,1977年の改正で,すべてのカルテルにつき,カルテルによって違法に得た利得の総額を法定の算定方式によって算出し国庫に納付することを命じる課徴金制度が導入され,これによる抑止効果が高く評価されている。
カルテル →カルテル法 →独占禁止法
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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