家庭医学館 「小児尿路感染症」の解説
しょうににょうろかんせんしょう【小児尿路感染症 Urinary Tract Infection in Children】
腎尿路(じんにょうろ)に細菌(多くは大腸菌(だいちょうきん))が感染して膀胱炎(ぼうこうえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)などをおこす病気で、かぜなどの呼吸器感染症についで頻度が高いものです。
感染がおこった部位によって、症状や経過が異なります。
下部に感染があるときは膀胱炎や尿道炎(にょうどうえん)、上部に感染があるときは腎盂腎炎がおこります。
細菌の感染がおこりやすくなるような腎尿路の構造的な異常をともなっているかどうかによっても、単純性尿路感染症(たんじゅんせいにょうろかんせんしょう)と複雑性尿路感染症(ふくざつせいにょうろかんせんしょう)に分けられ、このちがいによって、治療の期間も異なってきます。
[症状]
かぜの症状がないのに発熱したり、腰痛、排尿痛、頻尿(ひんにょう)、残尿感(ざんにょうかん)といった症状があるときは、この病気が疑われます。
子どもでは、無症状のことが多いのですが、おねしょ(夜尿症(やにょうしょう))やおもらし(昼間遺尿(いにょう))によって気づくこともあります。
具体的には、
①原因不明の発熱がある。
②嘔吐(おうと)や腹痛といった消化器症状がある。
③頻尿、排尿障害、あるいは遺尿などがおこる。
④身長、体重が増加しない。
⑤新生児期の黄疸(おうだん)が長引く。
⑥顔色が蒼白(そうはく)で、倦怠感(けんたいかん)がある。
などの不定愁訴(ふていしゅうそ)があげられます。
[検査と診断]
診断は、尿沈渣(にょうちんさ)で白血球(はっけっきゅう)や細菌が増えていることが決め手になります。
最近では、まったく症状がなく、腎尿路に異常がないにもかかわらず、尿からつねに細菌や白血球が見つかることがあります(無症候性膿尿(むしょうこうせいのうにょう)あるいは無症候性細菌尿)。
これらは学校健診時の検尿などで偶然発見されることがあります。
尿路感染をくり返すようであれば、腎尿路で尿が停滞あるいは逆流するような構造的異常があることも考え、超音波検査、腎盂造影、排泄性膀胱尿道造影(はいせつせいぼうこうにょうどうぞうえい)などの画像検査を行ないます。
[治療]
治療の基本は、感受性抗生物質の服用、あるいは静脈注射による使用です。
ふつう膀胱炎では5~7日間、腎盂腎炎では14日間の治療を行ないます。腎盂腎炎をくり返すと、腎臓が障害されて、最終的に腎機能低下をきたすため、早期発見・早期治療が重要です。