小林久三(読み)コバヤシキュウゾウ

デジタル大辞泉 「小林久三」の意味・読み・例文・類語

こばやし‐きゅうぞう〔‐キウザウ〕【小林久三】

[1935~2006]推理作家。茨城の生まれ。本名久三ひさみ。映画プロデューサーを務めるかたわら小説を書き始め、足尾銅山鉱毒事件舞台とした「暗黒告知」で江戸川乱歩賞受賞。本格的な作家生活に入る。他に「びた炎」「皇帝のいない八月」「父と子の炎」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小林久三」の意味・わかりやすい解説

小林久三
こばやしきゅうぞう
(1935―2006)

推理作家。本名久三(ひさみ)。茨城県生まれ。東北大学文学部卒業。松竹映画の助監督を経てプロデューサーとなる。1970年(昭和45)から作品の発表を始め、『推理界』に「零号試写室」(1970)を発表。72年には、冬木鋭介名による「腐蝕色彩」が小説サンデー毎日新人賞を受賞。74年、足尾銅山の鉱毒事件を舞台にした密室殺人を描く『暗黒告知』で江戸川乱歩賞を受賞した。映画界の内幕に取材した『裂けた箱船』(1976)、血友病患者の誘拐(ゆうかい)を扱った『錆(さ)びた炎』(1977)、自衛隊のクーデター事件を描く『皇帝のいない八月』(1978。山本薩夫監督で映画化)、3億円事件を題材にとった『父と子の炎』(1981。角川小説賞)、松竹大船撮影所時代のことを書いたエッセイ『雨の日の動物園』(1981。キネマ旬報読者賞)など、意欲的作品を発表する。1990年代以降は、『風と雲の伝説――私説太閤(たいこう)記』(1991)、『異説日本史』(1995)、『竜馬暗殺』(1996)、『天下統一の闇史(やみし)――秀吉・信長・家康』(1997)、『「戦国史」謎解き読本』(2000)など、歴史ミステリーに精力的に取り組んだ。

厚木 淳]

『「零号試写室」「腐蝕色彩」(『蒼ざめた斜塔』所収・1974・毎日新聞社)』『『暗黒告知』(1974・講談社)』『『裂けた箱舟』(1976・角川書店)』『『錆びた炎』(1977・角川書店)』『『皇帝のいない八月』(1978・講談社)』『『父と子の炎』(1981・角川書店)』『『雨の日の動物園』(1984・キネマ旬報社)』『『風と雲の伝説――私説太閤記』(1991・光風社出版)』『『義経の首』(1993・光風社出版)』『『異説の日本史』(1995・世界文化社)』『『竜馬暗殺――捜査報告書』(1996・光風社出版)』『『天下統一の闇史――秀吉・信長・家康』(1997・青春出版社)』『『「戦国史」謎解き読本』(2000・青春出版社)』『佐野洋著『推理日記』2・3(講談社文庫)』『「日刊ゲンダイ」編集部編『私のヰタ・セクスアリス(1)――衝撃のインタビュー』(河出文庫)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小林久三」の解説

小林久三 こばやし-きゅうぞう

1935-2006 昭和後期-平成時代の推理作家。
昭和10年11月15日生まれ。松竹大船撮影所にはいり,助監督をへてプロデューサーとなる。昭和49年足尾鉱毒事件をあつかった「暗黒告知」で江戸川乱歩賞をうけ,作家生活にはいる。「皇帝のいない八月」「錆びた炎」など,社会性のあるテーマを追う作品がおおい。平成18年9月1日死去。70歳。茨城県出身。東北大卒。

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