改訂新版 世界大百科事典 「小角散乱」の意味・わかりやすい解説
小角散乱 (しょうかくさんらん)
small angle scattering
X線が10~3000Åくらいの大きさの微粒子を通過するとき,入射X線ときわめて小さい角度(通常1度以下)範囲に散漫な回折像や,ときには明らかな回折環を生じる。この現象をX線小角散乱または単に小角散乱という。また普通の結晶でも,長い周期をもつ物質のブラッグ反射はこの角度範囲にあらわれる。小角散乱による回折像を調べることによって,結晶のもつ非常に長い周期性の測定ができたり,微粒子の大きさ,形状,集合状態についての知識が得られる。小角散乱を観測するには,非常に細く平行度の良い単色X線束をつくり,試料のきわめて薄い層を通過させ,その直後に入射X線を遮へいする楯を置き,試料によって散乱されたX線のみを写真フィルムまたは計数管を用いて測定する。この方法は,コラーゲン,絹フィブロインなどの長周期構造,繊維,合成樹脂類,無機・有機のコロイド,粘土など数多くの研究に利用されている。
執筆者:松本 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報