入力パルス信号を数えるために特別設計された電子管。または、放射性粒子による電離現象や発光現象を利用して、到来粒子を計数する装置。
入力パルスを計数する電子管には、放電管と真空管によるものとがあり、いずれも数が直接表示できるようくふうされている。代表的な計数放電管としてはデカトロンがある。これは、円板状の陽極の周りに10組の案内用電極をもった陰極が配列されており、管内にはヘリウム、ネオン、アルゴンなどのほか、計数速度をあげるため少量の水素が封入されている。入力パルスで1個の陰極と陽極間がグロー放電により点灯し、さらにパルスが加わるごとに円板の周りを1個ずつ回転点灯していくもので、点灯位置によってパルスの数を表示する。計数速度は毎秒数万程度。
真空管による放電管には、E1Tとトロコトロンとがある。E1Tは、リボン状の電子ビームを出す陰極と陽極の間に静電偏向板と10個の穴をもったスクリーンがあり、入力パルス数に応じて蛍光面を光らせ、数を表示する。計数速度は毎秒10万程度。トロコトロンは、陰極から出る電子ビームを電界と磁界の中を走らせて、入力パルスによってその位置を制御し、計数するもの。取扱いはやや複雑であるが、計数速度は毎秒1000万に及ぶ。
到来粒子を計数する装置には、パルス電離箱、固体計数体、比例計数管、ガイガー‐ミュラー計数管、シンチレーション計数管、チェレンコフ計数管などがある。いずれもα(アルファ)線、β(ベータ)線、陽子線、中間子などの高速荷電粒子の電離作用や励起作用を利用して、それらの荷電粒子を1個ずつ検出する。パルス電離箱は、入射した放射線の電離作用で電極に生ずる電圧変動を、パルスとして増幅し計数するものである。α線や核分裂破片のエネルギー測定に用いられ、100万分の1秒程度のパルス分解能がある。固体計数体は、種々の放射線の検出に使用される。強電場に置かれた半導体や結晶体に放射線が入射すると、その経路に沿った束縛電子はエネルギーを得て自由電子流となる。この電子流が電極に発生させたパルス電圧を増幅し、計数するのが固体計数器である。比例計数管とガイガー‐ミュラー計数管は、ともに入射放射線によるガスの電離作用に基づく放電を利用したもので、前者は、入射放射線のエネルギー分布が求められるようくふうされている。シンチレーション計数管とチェレンコフ計数管は、前者は放射線が発光物質に当たったときに発する光を、後者は放射線が透明な物質を通過するとき放出するチェレンコフ放射光を、それぞれ光電子増倍管で検出する装置である。
[岩田倫典]
『河田燕著『放射線計測技術』(1978・東京大学出版会)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
α,β,γ線または中性子線など高エネルギーの粒子,または光子と物質との相互作用を利用して,入射した粒子の数を測定する装置.荷電粒子による気体の電離作用を利用した比例計数管やガイガー-ミュラー計数管,光子による原子の励起に伴う発光現象を利用したシンチレーション計数管,透明物質中を電子が進行する際に,その速さが物質中での光速度より速い場合に起こる発光現象を利用したチェレンコフ計数管などがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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