日本大百科全書(ニッポニカ) 「少額短期保険」の意味・わかりやすい解説
少額短期保険
しょうがくたんきほけん
支払われる保険金が最大1000万円と少なく、保険期間も1~2年以内と短い保険。通称はミニ保険で、少短と略されることもある。2006年(平成18)施行の改正保険業法(平成7年法律第105号)により、根拠法がなかった無認可共済の受け皿商品として導入された。ペット保険や家財盗難・破損保険を中心に、スマートフォン保険、旅行・イベントチケット代キャンセル保険、結婚式代キャンセル保険、葬儀保険、自転車事故保険、バイク盗難・破損保険、ゴルフ・スキー・スノーボード事故保険、感染症保険などがある。保険期間は損害保険で2年以内、生命・医療保険で1年以内。契約者保護のための保険契約者保護機構の対象外の保険であり、少額短期保険事業者が破綻(はたん)した際の保障(補償)はない。
少額短期保険事業者は、年間の保険料収入(再保険料を除く)を50億円以下に制限され、資産運用対象も預貯金(外貨建てを除く)や国債に限られ、株式などでの運用はできない。運用リスクが低いため、通常の生命・損害保険事業者(資本金が10億円以上)が金融庁による免許制をとっているのに対し、少額短期保険事業者は最低資本金1000万円以上などの条件を満たせば、地方財務局への登録だけで済む。このため少額短期保険市場には、既存の生保・損保会社のほか、通信、不動産、小売りなど異業種からの参入が相次ぎ、2023年(令和5)4月時点で119事業者に上る。しかし2020年ころから、保険金の支払いが滞るトラブルが相次ぎ、2023年にはペット保険を扱うペッツベスト少額短期保険が破綻した。これを受け金融庁は2023年4月、新規登録事業者には、企業の経営管理業務に3年以上携わった人材の配置を求め、既存事業者には、(1)ソルベンシー・マージン比率200%以上、(2)事業を6か月以上継続できる手元資金(現金・純資産)の確保、などを基準とした早期警戒制度を導入するなどの監督指針を示し、規制強化に踏み切った。
[矢野 武 2023年7月19日]