(金廻寿美子 ライター / 2008年)
(重川純子 埼玉大学助教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
大災害、伝染病の流行、株価暴落など通常では予測しにくいリスクに対し、保険会社がどれほど保険金を支払う能力があるかを示す指標。保険会社の経営健全性を示す代表的指標として欧米で導入され、日本では改正保険業法に基づき、1998年(平成10)3月期から公表が始まった。日本では「支払い余力比率」と訳される。分子に純資産などの内部留保や有価証券の含み益などの自己資本額(支払い余力)を置き、分母に大災害や資産運用損失など予想を超えたリスク総額の半分を置いて比率を計算し、パーセント(%)で示す。一般の事業会社の自己資本比率に相当し、数値が大きいほど健全とされる。200%の場合、支払い余力とリスク総額が同じことになる。金融庁は200%を下回った保険会社に早期是正措置命令を発動し、マイナスになると業務停止を命令する。ソルベンシー・マージン比率が200%を超えていれば経営は健全とみられがちであるが、過去に破綻(はたん)した千代田生命(2000年)、協栄生命(同)、東京生命(2001年)、大和生命(2008年)などでは破綻前に200%を超えていた。このため規制当局は繰り返し、ソルベンシー・マージン比率の算出基準を厳格化している。
2008年(平成20)秋以降の世界的な金融危機に伴い、日本政府は2012年3月期から、海外の保険子会社を含む連結ベースで比率を計算するように改めたほか、価格変動リスクの大きい株式のリスク量を2倍に引き上げた。2016年よりヨーロッパで適用され、日本でも導入が予想される新規制「ソルベンシー2」では、株式リスク量をさらに厳しく見積もるほか、200年に一度の甚大なリスクへの備えを保険会社に求める見通しである。
なお保険会社の経営健全性を測る指標にはソルベンシー・マージン比率のほか、本業のもうけを示す「基礎利益」や生命保険会社の収入を示す「年換算保険料」などがある。
[矢野 武 2017年10月19日]
出典 自動車保険・医療保険のソニー損保損害保険用語集について 情報
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