改訂新版 世界大百科事典 「居留地貿易」の意味・わかりやすい解説
居留地貿易 (きょりゅうちぼうえき)
居留地内で行われた日本商人と外国商人との貿易。1858年(安政5),江戸幕府が結んだ安政五ヵ国条約で居留外国人の遊歩区域を開港場の10里四方に限ることが定められたため,外国商人の活動は居留地内にほぼ限定されることとなり,貿易は居留地内で日本商人と外国商人の間で行われる形が基本であった。この居留地貿易は不平等条約の下で続いたが,94年にイギリスとの条約改正交渉がまとまったのを皮切りに各国との改正条約が調印され,99年に居留地は廃止され,居留地貿易も消滅した。1898年当時の日本の輸出額の74%,輸入額の66%は外国商人の取扱いであったから,不平等条約下における日本の対外貿易の多くは居留地外商を相手とする居留地貿易であったといえよう。横浜,長崎,函館,神戸などの開港場には日本人の売込商や引取商がしだいに集まって店を構えるようになったが,外国商人は外国銀行や海運会社などと結んで経済的に優位に立ったばかりでなく,領事裁判権による保護を受けることができたため,日本商人はしばしば不利な取引を強要された。
1881年の連合生糸荷預所事件やその後90年代にかけて頻発した日本商人による取引拒絶事件は,いずれも〈商権回復〉を目ざすための試みであり,日本商人による輸出入貿易そのものへの進出とあいまって,居留地における取引慣習をしだいに改善していった。
執筆者:石井 寛治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報