工芸または工業の原料となり,加工されてから人に利用される作物をいう。一般に農作物は食用作物,工芸作物,飼料作物に分けられるが,これは植物の種による区分ではなく,その利用法による区分である。例えばサツマイモは,焼いたり煮たりして食べるときは食用作物だが,デンプンやアルコール原料とする場合には工芸作物,家畜に食べさせれば飼料作物として扱われる。普通,工芸作物の場合,生産者から消費者に渡る前に加工業者を経由する。原料の品質はそのまま製品の良否につながる面が強く,これによって価格が大きく変わるため,収量以上に品質が重視される。したがって,それぞれの作物によく適した土地が選ばれ,高度な栽培技術が必要とされることが多い。また,立地上は加工工場との関係も強く,それぞれの地域によって特産物化する傾向がある。
工芸作物は用途別に繊維料作物,油蠟料作物,糖料作物,デンプンおよび糊料作物,嗜好料作物,香辛料作物,芳香油料作物,ゴムおよび樹脂料作物,タンニン料作物,染料作物,薬料作物などに分けられる(表)。ただし多目的に利用される作物も少なくない。例えばベニバナは種子から油を採るので油蠟料作物であるが,花弁からは染料を採るので染料作物でもある。最近,デンプンおよび糊料作物と糖料作物はアルコール原料の面から石油代替のエネルギー資源,バイオマスとして注目されている。
執筆者:星川 清親
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工芸や工業の原料とすることを目的に栽培される作物の総称。食用作物でもそれが工業原料として生産される場合には工芸作物に分類される。原料の良否が製品の質につながるため、工芸作物では収量だけでなく品質がとくに重視される。良品質の生産物を得るために、各作物はそれぞれ適した土地で栽培され、また生産者には高度な栽培技術が要求される。このため一部の地域や集団に栽培が集中し、一定地域で特産物化する傾向があり、また、プランテーションなど企業的栽培が行われることがある。
工芸作物には次のようなものがある。
(4)デンプン・糊(のり)用 サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバ、トウモロコシなど。
(5)嗜好(しこう)用 チャ、コーヒー、タバコなど。
(6)香辛料 コショウ、シナモン、ゲッケイジュ、サフランなど。
(7)香料 ラベンダー、ジャスミン、バラ、バニラなど。
(8)樹脂類 パラゴムノキ、アラビアゴムノキ、ウルシなど。
(9)染料 アイ、ベニバナ、ウコンなど。
(10)薬用 オウレン、チョウセンニンジン、ケシ、ホップなど。
(11)タンニン用 ワトル、ウルシなど。タンニンは製革用や薬用、染色用として用いる。
[星川清親]
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…栽培される食用植物を食用作物と呼び,全世界に900種類以上,日本だけでも約200種類ある。農業上では,食用作物を狭義の食用作物と園芸作物とに分けて扱っており,また工芸作物として分類されている作物の中にも,香辛料,油料,甘味料作物など食用のものも食用作物に含めることができる。 狭義の食用作物とは,人間の主要なエネルギー源となり,主食や準主食とされるもので,おもに穀類といも類とからなる。…
※「工芸作物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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