工芸作物(読み)コウゲイサクモツ(英語表記)industrial crop

デジタル大辞泉 「工芸作物」の意味・読み・例文・類語

こうげい‐さくもつ【工芸作物】

収穫後、製造・加工など比較的多くの過程を経て利用される作物。綿・麻・茶・タバコアブラナなど。

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精選版 日本国語大辞典 「工芸作物」の意味・読み・例文・類語

こうげい‐さくもつ【工芸作物】

  1. 〘 名詞 〙 製造・加工して後、人の用に供される作物。綿、麻、茶、煙草、藍、油菜などの類。
    1. [初出の実例]「工芸作物(コウゲイサクモツ)の第一は甘蔗類なり」(出典風俗画報‐三四四号(1906)産業)

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改訂新版 世界大百科事典 「工芸作物」の意味・わかりやすい解説

工芸作物 (こうげいさくもつ)
industrial crop

工芸または工業の原料となり,加工されてから人に利用される作物をいう。一般に農作物食用作物,工芸作物,飼料作物に分けられるが,これは植物の種による区分ではなく,その利用法による区分である。例えばサツマイモは,焼いたり煮たりして食べるときは食用作物だが,デンプンやアルコール原料とする場合には工芸作物,家畜に食べさせれば飼料作物として扱われる。普通,工芸作物の場合,生産者から消費者に渡る前に加工業者を経由する。原料の品質はそのまま製品の良否につながる面が強く,これによって価格が大きく変わるため,収量以上に品質が重視される。したがって,それぞれの作物によく適した土地が選ばれ,高度な栽培技術が必要とされることが多い。また,立地上は加工工場との関係も強く,それぞれの地域によって特産物化する傾向がある。

 工芸作物は用途別に繊維料作物,油蠟料作物,糖料作物,デンプンおよび糊料作物,嗜好料作物,香辛料作物,芳香油料作物,ゴムおよび樹脂料作物,タンニン料作物,染料作物,薬料作物などに分けられる(表)。ただし多目的に利用される作物も少なくない。例えばベニバナは種子から油を採るので油蠟料作物であるが,花弁からは染料を採るので染料作物でもある。最近,デンプンおよび糊料作物と糖料作物はアルコール原料の面から石油代替のエネルギー資源バイオマスとして注目されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「工芸作物」の意味・わかりやすい解説

工芸作物
こうげいさくもつ

工芸や工業の原料とすることを目的に栽培される作物の総称。食用作物でもそれが工業原料として生産される場合には工芸作物に分類される。原料の良否が製品の質につながるため、工芸作物では収量だけでなく品質がとくに重視される。良品質の生産物を得るために、各作物はそれぞれ適した土地で栽培され、また生産者には高度な栽培技術が要求される。このため一部の地域や集団に栽培が集中し、一定地域で特産物化する傾向があり、また、プランテーションなど企業的栽培が行われることがある。

 工芸作物には次のようなものがある。

(1)繊維用 ワタ、アサ、イグサコウゾなど。

(2)油脂用 ゴマ、ダイズ、ベニバナ、アブラヤシなど。

(3)糖用 サトウキビテンサイなど。

(4)デンプン・糊(のり)用 サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバ、トウモロコシなど。

(5)嗜好(しこう)用 チャ、コーヒー、タバコなど。

(6)香辛料 コショウ、シナモン、ゲッケイジュサフランなど。

(7)香料 ラベンダー、ジャスミン、バラ、バニラなど。

(8)樹脂類 パラゴムノキ、アラビアゴムノキ、ウルシなど。

(9)染料 アイ、ベニバナ、ウコンなど。

(10)薬用 オウレン、チョウセンニンジン、ケシ、ホップなど。

(11)タンニン用 ワトル、ウルシなど。タンニンは製革用や薬用、染色用として用いる。

[星川清親]

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百科事典マイペディア 「工芸作物」の意味・わかりやすい解説

工芸作物【こうげいさくもつ】

収穫後比較的長い加工・製造工程を経て製品に至る作物。一般に工業原料として商品的性格が顕著で,適地・適作などによる品質確保を必要とするため,特産物の形態をとることが多い。おもなものを分類すると,1.油料類。ダイズ,ラッカセイ,ゴマ等。2.繊維料類。ワタ,マニラアサ,ミツマタ等。3.糖料類。サトウキビ,テンサイ等。4.染料類。サフラン,ベニバナ等。5.薬用類。ケシ,ジギタリス,ハッカ等。その他香辛料類,樹液料類,タンニン料類などがある。
→関連項目広益国産考

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「工芸作物」の意味・わかりやすい解説

工芸作物
こうげいさくもつ
industrial crop

比較的長期にわたる加工,製造工程を経て製品にいたる農作物をさす。繊維原料のワタ,アサ,採油作物のダイズ,ゴマ,オリーブ,糖原料のサトウキビ,サトウダイコン,樹液料のゴム,ウルシ,デンプン原料のサツマイモ,ジャガイモ,紙原料のコウゾ,ミツマタ,染料のアイ,香料になるコショウ,ニクズクなどがある。これらは大規模に栽培されるものが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の工芸作物の言及

【食用植物】より

…栽培される食用植物を食用作物と呼び,全世界に900種類以上,日本だけでも約200種類ある。農業上では,食用作物を狭義の食用作物と園芸作物とに分けて扱っており,また工芸作物として分類されている作物の中にも,香辛料,油料,甘味料作物など食用のものも食用作物に含めることができる。 狭義の食用作物とは,人間の主要なエネルギー源となり,主食や準主食とされるもので,おもに穀類といも類とからなる。…

※「工芸作物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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