古くは紀元前数千年の昔から、おもに衣類や食品の染色と着色に、まれに化粧・染髪料などとして、世界中の民族が利用してきた植物は3000種類を超え、高等植物から地衣類、海藻にまで及んでいる。しかし、これらのなかで栽培されている種類はわずか被子植物の一部にすぎない。染料作物とは有用な染料をとる目的で栽培される植物をさすが、実際には、その地域に自生している野生植物を身近に植えただけのものから、野生種にはみられない優れた品種を含み、しかも広い地域に普及して経済的効果をあげているものまであり、どこまでを作物として取り扱うか、その範囲は微妙である。また、染料となる植物体の部分もさまざまであるから、植物ごとに収穫部分を適切に処理して含有色素などの変質を避けるくふうが必要となる。
染色や着色に用いる色素(まれに色素の元)が含まれている目的部分によって染料作物を大別すると次のようである。(1)葉 アイ、カリヤス(全草)、(2)花 ベニバナ(花弁)、サフラン(柱頭)、(3)果実 クチナシ、(4)種子 ベニノキ、(5)根 ムラサキ、ウコン(根茎)、(6)茎 ロッグウッド(材)、キハダ(樹皮)、(7)樹脂 シオウ。また、とれる染料の色によって、(1)黄色系 カリヤス、キハダ、(2)赤色系 アカネ(根)、ベニバナ、(3)紫色系 ムラサキ、(4)青色系 アイ、(5)褐色~黒褐色系 ガンビールノキ(葉・茎)に大別される。
染料作物には多くの種類があったが、経済的価値の低いものや合成染料に押されたものが衰えていった。そのなかでも著しい例は、古くは染料作物の中核をなしていた赤色系のアカネや青色系のアイの仲間にみることができる。かつて、セイヨウアカネはヨーロッパで、アイは日本と中国で、インドアイはインドや北アメリカで広く栽培されていたが、19世紀の終わりに安価な合成染料の製造が台頭するとともに衰退の一途をたどった。日本でもアイの作付面積はかつての1000分の1ほどに減少してしまった。しかし天然藍(あい)の強固な耐水性と鮮明な色彩には合成品をしのぐものがあり、そのよさが見直されて、今日もなお日本を代表する染料作物となっている。
[大谷俊二]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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