ゴマ(読み)ごま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴマ」の意味・わかりやすい解説

ゴマ
ごま / 胡麻
[学] Sesamum indicum L.

ゴマ科(APG分類:ゴマ科)の一年草。油料作物として栽培される。茎は四角形で、高さ1メートル前後。葉は長さ約10センチメートル、長楕円(ちょうだえん)形ないし披針(ひしん)形であるが、茎の下位の葉は広楕円形で3裂するものもある。茎葉は軟毛に覆われている。夏季、茎の上部の葉腋(ようえき)に鐘状の花をつける。花は長さ2.5センチメートルほどで淡紫色、花冠の先は不等に5裂し、下唇3裂片は上唇2裂片よりやや長い。雄しべは4本で、そのうちの2本が長い。果実蒴果(さくか)で、長さ2.5センチメートルほどの短円筒形、普通は4室に分かれ、熟すと裂開して多数の種子がこぼれる。

 栽培ゴマの起源アフリカといわれる。紀元前1300年ころにはギリシアですでに栽培されていた。中国には紀元100年ころ西域(せいいき)民族(胡(こ))を経て伝えられ、その後日本へ入った。ゴマの名は、胡から伝来したもので、種実がアサ(麻)に似ている植物という意味らしい。世界で約553万トンの生産があり(2017)、そのうち、およそ60%はアフリカ諸国、40%はアジア諸国でとれている。日本では農家の自家用に栽培する程度であるが、年々需要が増加し、ゴマ種子を年間15万トン(採油用)も輸入している。

 栽培にはやや高温を要し、霜に弱いので5月に播種(はしゅ)する。莢(さや)は熟すと自然に裂けて種子がこぼれ落ちてしまうので、9月末、茎の下部の莢が成熟したころ早めに刈り取って乾燥し、たたいて種子をとる。

[星川清親 2021年8月20日]

利用

ゴマ(種子)100グラム中に、タンパク質19.8グラム、炭水化物18.4グラム、脂質51.9グラムが含まれ、油料作物中もっとも含油率が高い。またビタミンEを含むなど栄養的にも優れている。ゴマはかき混ぜながら焙烙(ほうろく)で炒(い)るが、昔から「三粒はねたらよい」といわれる。刻むと特有の香味がいっそう増すので、お茶漬け、汁物、和(あ)え物、ひたし物などに散らすには切りごまにして用いる。ごまみそ、ごまじょうゆ、ごま酢などに仕立てるには、炒りごまを熱いうちにすり鉢で油がにじみ出るほどにすって用いる。そのほか、胡麻豆腐などにも加工され、香りと歯ざわりを生かして菓子材料にも使われる。種子を炒って粉砕し、蒸して圧搾しごま油を絞る。ごま油は風味佳良で、そのままでも食用としてとくに精製する必要がないほどであるが、精製すればごま白絞(しらしめ)油が得られる。これはオレイン酸50%、リノール酸40%からなる半乾性油であり、てんぷら油として最上等とされる。

 食用のほか、油は医薬、工業用にも重要である。昔は灯用にも使用された。油を搾ったかすは、家畜の飼料にされる。

[星川清親 2021年8月20日]

文化史

人類が最初に栽培した油料作物の一つで、原産地はアフリカのサバナ地帯とする見方が有力である。現在でも、別種のアラーツムS. alatum Thonn.やアングスティフォリウムS. angustifolium Engl.などがアフリカの先住民によって食用油にされ、葉も野菜として利用されている。日本でも、ゴマの葉は江戸時代に食用にされた(『菜譜』)。ごま油は奈良・平安時代には重要な灯油で、『大宝律令(たいほうりつりょう)』(701)では成人男子1人当り7勺(しゃく)(約0.126リットル)のごま油の貢献が義務づけられている。また、インド古代の医書『チャラカ本集』(前1~後2世紀の間に成立)には、発疹(ほっしん)や便秘の薬としてごま油があがる。

[湯浅浩史 2021年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴマ」の意味・わかりやすい解説

ゴマ(胡麻)
ゴマ
Sesamum indicum; sesame

ゴマ科の一年草で,インド原産。日本には中国から伝来して古くから栽培されている。茎は高さ 1mぐらいの四角柱状で毛が多い。葉は対生し長さ6~12cmの広披針形,ときに3つに裂けることもある。夏に,葉腋に淡紫色を帯びたらっぱ状の花をつける。果実は楕円体状の 蒴果で2室ないし4室に分れ,中に多量の種子を生じる。品種が多く,種子の色に黒,白,黄褐色などがあり,それぞれ黒胡麻,白胡麻,金胡麻と呼ばれる。種子に 50%内外の油を含み,しぼって胡麻油をとり,またそのまま食用にする。

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