改訂新版 世界大百科事典 「年中行事秘抄」の意味・わかりやすい解説
年中行事秘抄 (ねんちゅうぎょうじひしょう)
朝廷の年中行事儀式について記した公事の書。行事の意義,起源をはじめ,先例故実を古書より引用,抄録しており,とくに,そのなかに中国の書が多くみられるのが特徴である。引用文献のなかに建久(1190-99)の年号があり,また《群書類従》本の奥書に永仁(1293-99)ころ書写したと書かれていて,おおむね永仁以前に作られたと思われる。本書の特徴として,みずから儀式の次第を説明することはあまりせず,引用書の先例によって行事の実態を明らかにしている。《群書類従》本の奥書に,松平定信本と屋代弘賢本のほか,数本をもって校したことがみえており,その祖本は葉室長光が書写したものから出た系統のものである。
執筆者:山中 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報