社会全般または特定分野の1年間のできごとを記録,解説した年刊形式の便覧で,将来の研究調査の便に資することを目的とする。政府機関や学会では〈年報〉ということもある。年鑑の起源はイギリスやスカンジナビア諸国で中世まで用いられた原始的な棒暦clog almanacである。これは短冊形の木片に日月星辰の運行を記したものであった。航海者には,航海暦nautical almanacが必須のものであった。イヤーブックという書名が最初に用いられたのはイギリスの《法律年鑑The English Legal Year Books》で,1292-1534年までの判例を収録している。社会事象一般を収録した年鑑としては,1759年にE.バークにより編集された《アニュアル・レジスターAnnual Register》が最も古く,次いでヨーロッパ各国の王侯・貴族の系譜や各国の統計を記載した《ゴータ年鑑Almanach de Gotha》(1764)が出現した。19世紀以降になると,統計,記録ともに広い分野を網羅したいわゆる〈総合年鑑〉も出現するが,とりわけ《ホイッティカーズ・アルマナックWhitaker's Almanack》(1869創刊)は著名である。アメリカでも《ワールド・アルマナック》をはじめ《アメリカーナ・アニュアル》《インターナショナル・イヤーブック》などが知られている。
日本では,社会全般の概説,統計,名簿などを記載した年鑑は,第2次大戦中までは《毎日年鑑》(1919),《朝日年鑑》(1924)など限られていたが,戦後は《時事年鑑》(時事通信社,1947),《世界年鑑》(共同通信社,1949),《読売年鑑》(1949)などが創刊された。また国際連合統計局の発行する《世界統計年鑑》《世界人口年鑑》《世界貿易統計年鑑》も公刊された。さらに1955年ころより,官公庁,都道府県,民間業界,文化界から多くの〈専門年鑑〉が刊行されはじめ,その数は二千数百に達する。総合年鑑としては新聞社系のほか,近年は百科事典の補遺として《百科年鑑》(平凡社),《時事百科》(小学館)などが刊行された。アメリカの《ブリタニカ年鑑》をはじめ,フランスの《ラルース時事年鑑》,ドイツの《マイヤー年鑑》などがあり,旧ソ連では《ソビエト大百科年鑑》が刊行されていた。
執筆者:紀田 順一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ある特定の地域や分野について、最新のできごと、動向や統計などを内容とし、毎年あるいは1、2年おきに刊行される出版物。年報、年表ともいう。年鑑には『読売年鑑』(読売新聞社編)など、ある国を中心として政治、経済、社会、文化などを網羅する「総合年鑑」と、『出版年鑑』(出版ニュース社編)、『宗教年鑑』(文化庁編)、『貿易年鑑』(日本関税協会編)、『理科年表』(国立天文台編)など、特定の分野についての「専門年鑑」がある。また、『ブリタニカ・ブック・オブ・ザ・イヤー』『アメリカーナ・アニュアル』など、既刊の百科事典を補う「百科年鑑」もある。いずれも記録性と資料性を重視している。
年鑑の起源は、古代バビロニアの天文学にさかのぼることができる。1457年には、ヨーロッパで初めて印刷された年鑑が刊行された。今日まで刊行されている最古の年鑑は、1758年にイギリスで創刊された『アニュアル・レジスター』である。日本では1876年(明治9)発行の『万国年鑑』(統計寮訳)がもっとも古く、ついで『日本帝国統計年鑑』(1882。『日本統計年鑑』の前身)、『時事年鑑』(1917)などが刊行された。国際的には国際連合発行の『世界統計年鑑』『世界人口年鑑』、イギリスの『ホイッテーカー・アルマナック』『ステーツマンズ・イヤーブック』、アメリカの『ワールド・アルマナック・アンド・ブック・オブ・ファクツ』、ドイツの『フィッシャー世界年鑑』、フランスの『キドquid』、中国の『中華人民共和国(中国)年鑑』、韓国の『東亜年鑑』『連合年鑑』などが有名である。なお、現在ではオンラインで提供される年鑑もある。
[川井良介]
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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