広域搬送拠点臨時医療施設(読み)コウイキハンソウキョテンリンジイリョウシセツ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

広域搬送拠点臨時医療施設
こういきはんそうきょてんりんじいりょうしせつ

地震や津波などの大規模な災害が発生したとき、傷病者を被災地外の災害拠点病院などへ搬送する広域医療搬送を行うために設置される医療施設。トリアージや初期診療などを行い、被災地内の応急救護所としての役割も受けもつ。航空搬送拠点臨時医療施設ともよばれる。災害派遣医療チームDMAT(ディーマット)が、重症の傷病者を自衛隊機で航空搬送する前提で、自治体が定めた空港に併設された格納庫、自衛隊基地、公園などに設置される。英語名Staging Care Unitの頭文字をとってSCUと略称される。設置場所としては、東京都では羽田(はねだ)空港、有明(ありあけ)の丘広域防災拠点、立川駐屯(ちゅうとん)地など、大阪府では大阪国際(伊丹(いたみ))空港、関西国際空港、八尾(やお)空港などが想定されている。各設置場所では、人工呼吸器や超音波診断装置などの高度医療機器をはじめ、医薬品、簡易ベッドや毛布などの一般医療資器材のほか、テントや通信設備などの手配が計画され、応援医療チームの医療スタッフなどが、自治体の要請に応じて参集できるように周辺自治体や医療施設との調整が図られる。
 災害発生時には、通常の被災患者は、いったん最寄りの災害拠点病院や一般の医療施設などへ搬送され、そこで対応が困難な場合にSCUへ搬送される。被災地の多くの病院は機能が麻痺(まひ)していると考えられ、多数の傷病者を、被災していない地域の病院機能の維持された場所へと、いち早く搬送する必要が生ずると想定される。搬送手段として、航空機による輸送が適しているものの、飛行中に可能な医療行為はきわめて制限されるため、傷病者の状態が航空機搬送に耐えられるかどうかを見極めることが不可欠である。患者の状態によっては、ドクターカーやドクターヘリなどの少人数を搬送する一般的な手段に頼らざるを得ないこともある。DMATで用いられている基準では、広域搬送の対象となる患者は、クラッシュ症候群、広範囲熱傷、体幹・四肢外傷、頭部外傷、集中治療を要する患者などとされている。
 2011年(平成23)の東日本大震災では、全国で初めていわて花巻(はなまき)空港(岩手県)や陸上自衛隊の霞目(かすみのめ)駐屯地(仙台市)などにSCUが設置された。いわて花巻空港では、地震発生から4日間で140人がSCUへ搬送され、そのうち高度医療を受ける必要のある16人が自衛隊のヘリコプターで被災地外へ移された。
 なお、SCUという医療用語は、脳卒中集中治療室Stroke Care Unitの略語としても用いられており、注意が必要である。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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