張炎(読み)ちょうえん(その他表記)Zhāng Yán

改訂新版 世界大百科事典 「張炎」の意味・わかりやすい解説

張炎 (ちょうえん)
Zhāng Yán
生没年:1248-1320

中国,宋末・元初の文人歌辞文芸の作家。字は叔夏,号は玉田または楽笑翁。浙江省杭州臨安の人。循王張俊5世の孫という貴公子だが,宋滅亡後は没落し漂泊した。南宋の精巧典雅な詞を代表する最後の作家。詞集《山中白雲詞》8巻のほか,《詞源》2巻が有名,上巻は歌辞としての音楽理論,下巻は文芸としての理論および批評を説き,宋代の詞論として最も精密といわれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「張炎」の意味・わかりやすい解説

張炎
ちょうえん
Zhang Yan

[生]淳祐8(1248)
[没]延祐7(1320)?
中国,宋末元初の詞人。臨安 (浙江省杭州) の人。字,叔夏。号,玉田,楽笑翁。南渡の功臣張俊の子孫にあたる名門の出で,32歳で南宋の滅亡にあい,以後風流韻事にふけって終った。姜 夔 (きょうき) ,呉文英周密らと交わってを酬唱し,特に詠物の詞にすぐれた。音楽にも詳しく,その著『詞源』は詞の音楽および修辞の理論について精密な見解が記されている重要な文献。詞集『山中白雲詞』 (8巻) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「張炎」の意味・わかりやすい解説

張炎
ちょうえん
(1248―1320?)

中国、宋(そう)末元(げん)初の文人、詞人。字(あざな)は叔夏(しゅくか)、号は玉田または楽笑翁。杭州(こうしゅう)(浙江(せっこう)省)の人。南宋初期の功臣、循王(じゅんおう)張俊の子孫という名門の出だが、南宋滅亡後は没落して飄泊(ひょうはく)した。音楽に詳しく、歌辞文芸「詞」の作家、理論家として有名。周密(しゅうみつ)、王沂孫(おうきそん)と並んで南宋文人詞の末尾を飾る。詞集『山中白雲詞』八巻のほか『詞源』二巻の著があり、上巻は音楽理論、下巻は文芸としての詞の理論と作家・作品の批評を収め、宋代の詞論の書としてもっとも精密といわれる。

村上哲見

『村上哲見著『中国詩文選21 宋詞』(1973・筑摩書房)』

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世界大百科事典(旧版)内の張炎の言及

【楽譜】より

…記号はのちに〈工尺譜〉として知られる〈合,四,一,上,勾,尺,工,凡,六,五〉の文字を用いるものと,さらにそれを簡略化した〈,一,〉などの記号を用いるものとがある。これらの俗字譜は,南宋に至って,朱熹(しゆき)(朱子)も言及しており,簡略化した文字譜の代表的な用例としては,張炎の《詞源》(1248),姜夔(きようき)の《白石道人歌曲》(1202),陳元靚(ちんげんせい)編《事林広記》(1269)などがあるが,記号は人によって多少の相違がある。しかしこの宋代の俗字譜は一般化せず,その後はあまり利用されなくなった。…

【詞】より

…音楽に通じ,したがって韻律も精密で,後世〈詞家の正宗〉と尊重される。南宋になると,対金戦争に活躍した辛棄疾(しんきしつ)(《稼軒詞》)のような〈豪放派〉と呼ばれる詞人もいるが,姜夔(きようき)(《白石道人歌曲》),呉文英(《夢窓甲乙丙丁稿》),さらに宋末では周密(《草窓詞》),張炎(《山中白雲詞》)などが周邦彦のあとを受け,精巧で典雅な詞をひろめた。これらの詞人は北宋の文人官僚とは異なり,もっぱら詩文書画などの文事だけで世に重んじられる特殊な階層で,詞はこうした文人たちによってひたすらに洗練される。…

※「張炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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