強行法規任意法規(読み)きょうこうほうきにんいほうき

改訂新版 世界大百科事典 「強行法規任意法規」の意味・わかりやすい解説

強行法規・任意法規 (きょうこうほうきにんいほうき)

ある法規の定める法的効果が当事者意思にかかわらず発生する場合その法規を強行法規といい,逆に,その法的効果が当事者の意思によって排除されうる場合,その法規を任意法規という。それぞれ強行規定,任意規定ともいう。一般に,公の秩序に関する規定は強行法規であり,そうでないものが任意法規とされる(民法91条)。したがって,公法の規定のほとんどは強行法規である。しかし,私法の規定には強行法規もあれば任意法規もある。債権法には任意法規が多いが,物権法は善意第三者に関係するため原則として強行法規である。また労働基準法など,弱者保護を意図するものは強行法規である。強行法規は,そこに定められた行為や状態の法的実現を国家の基本原則として示すものであり,強行法規違反の行為は法的に無効とされる。なお,このような行為を別の手段を用いて行おうとするとき,その行為は脱法行為と呼ばれ,やはり法的には無効とされる。また,強行法規はそれに違反する行為の無効を定めるものの,必ずしもその行為に対して制裁を課すわけではない点で,取締規定とは異なる。他方,任意法規は,当の行為について当事者が意思表示をしていない場合にはその補充法規として,また当事者の意思が不明確な場合にはその解釈法規としての役割を果たす。個々の法規が強行法規であるか任意法規であるかは,法規の表現そのものからは識別しがたいことが多く,結局は,各規定の目的を基準として決める以外にはない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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