日本大百科全書(ニッポニカ) 「形質細胞性腫瘍」の意味・わかりやすい解説
形質細胞性腫瘍
けいしつさいぼうせいしゅよう
形質細胞が体内に腫瘍性増殖をきたし腫瘤(しゅりゅう)を形成するもの。形質細胞腫瘍あるいは形質細胞腫ともいう。形質細胞は、骨髄でつくられる血液細胞のなかの白血球の一種であるB細胞(Bリンパ球)から分化した細胞である。細菌やウイルスなどの病原微生物の侵入に対して、B細胞の一部が形質細胞にかわり、これが抗体をつくり感染を防ぐ働きをしている。この形質細胞が癌(がん)化したものが形質細胞性腫瘍である。
骨髄外の軟部組織(咽頭(いんとう)や扁桃(へんとう)、鼻腔(びくう)や副鼻腔)、消化管や肺などの臓器に発生する髄外形質細胞腫のほかに、骨や骨髄から発症する孤立性形質細胞腫と多発性形質細胞腫がある。骨に単一の骨髄腫細胞による腫瘤がみられる孤立性のものは良性であることが多いが、多発性のものは骨髄に浸潤をきたす予後不良な悪性腫瘍である。多発性形質細胞腫は形質細胞性骨髄腫ともよばれ、多発性骨髄腫もこれに含まれる。
症状は髄外形質細胞腫では発生する部位によって異なり、咽頭や扁桃および鼻腔や副鼻腔に発生した腫瘍では咳(せき)や血痰(けったん)などを伴い、消化管などの臓器に発生すると腹痛や食思(食欲)不振などを伴う。孤立性形質細胞腫では、腫瘤の形成された部分に痛みを伴うが、この腫瘍には放射線療法が有効とされている。高齢の男性に多くみられる多発性骨髄腫では貧血や腎(じん)機能の低下などを伴い、腰痛のほか骨の脆弱(ぜいじゃく)化から背骨の圧迫骨折や四肢の病的骨折などもみられる。
[編集部 2016年10月19日]