改訂新版 世界大百科事典 「律書残篇」の意味・わかりやすい解説
律書残篇 (りっしょざんぺん)
古代の刑罰に関する文献。《古律書残篇》とも呼ばれる。筆者不明。本書の一次的な成立は,798年(延暦17)以後,刪定(さくてい)律令が廃止された812年(弘仁3)以前の可能性が強いが,その後に追記された部分もあるらしい。首尾欠の12葉からなる巻子本で,中間にも欠葉があるらしい。内容は刑罰に関するものだが,大宝・養老律にみえない七逆・八逆についての規定など特異な内容をふくみ,古代の刑罰の実態を探る貴重な史料として注目される。しかし,万葉仮名をふくむ変則漢文である上に,誤写も多いので,まだ十分解読されていない部分が多い。国郡郷里に関する部分は,郷里(ごうり)制が施行されていた奈良時代前期の資料によったものと推定されている。紙背には〈大弁正広智三蔵和尚表制集〉と書写され,東大寺の東南院に伝わったことが知られるが,《律書残篇》の内容も東大寺と関係が深いと推定される。現在,お茶の水図書館蔵で重要文化財に指定。《改定史籍集覧》にも収めるが誤植,誤字が多い。古典保存会がコロタイプ版複製を刊行。
執筆者:吉田 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報