御通(読み)おとおり

精選版 日本国語大辞典 「御通」の意味・読み・例文・類語

お‐とおり‥とほり【御通】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 )
  2. 通ることを、その動作をする人を敬っていう語。
    1. [初出の実例]「酒林(さかばやし)の出た、隠れのない家でござります。おとをりにはお尋に与りませふ」(出典歌舞伎傾城壬生大念仏(1702)中)
  3. 貴い身分の人に召し出されること。おめどおりをいただくこと。
    1. [初出の実例]「出仕の時御前へ参るべからず、御次に祗候して、諸傍輩の体見つくろひ、さて御とをりへ罷出べし」(出典:早雲寺殿廿一箇条(17C初)八条)
  4. 貴い身分の人に召し出されて、手ずからの杯をいただくこと。また、その杯。おながれ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「ぜんぜんはくだされねども、おとほりをくださるる」(出典:虎明本狂言・餠酒(室町末‐近世初))

お‐つうじ【御通】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 )
  2. 他人の考えや気持をさとること。相手の言うことがわかること。
    1. [初出の実例]「気を緊(しっか)り持ちな。お玉さァん。エエ情(なさけ)ねえ、お通(ツウ)じなしだ」(出典:人情本娘太平記操早引(1837‐39)初)
  3. 大便の出ることを丁寧にいう。また、相手の人の便通
    1. [初出の実例]「夜中にお通(ツウ)じがあったから碁石が出て来たのよ」(出典:碁石を呑んだ八っちゃん(1922)〈有島武郎〉)

お‐とおし‥とほし【御通】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 )
  2. 酒のさかなとして出す簡単な食べ物。おとおしもの。
    1. [初出の実例]「阿佐ケ谷の飲屋で、お通しに出たマタタビの塩漬」(出典:白鳥の歌(1954)〈井伏鱒二〉)
  3. (ざる)をいう女房詞。〔女房躾書(室町末)〕
  4. 髪をとくことをいう御所詞
    1. [初出の実例]「御機嫌よく御目覚御髪の御とうしもあらせられす候」(出典:静寛院宮御側日記‐慶応元年(1865)閏五月三日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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