イギリスの詩人ミルトンの叙事詩。1671年刊。四巻からなる。素材としては『新約聖書』の共観福音(ふくいん)書、とくに「ルカ伝」の記事が用いられている。キリストが救世主、贖罪主(しょくざいしゅ)としての自覚をもち、宣教の生涯に入る前、悪魔(セイタン)の誘惑にあい、これに打ち勝つ物語が、この詩の中心となっている。これらの誘惑は、なんらかの形で人間が経験するものであるが、キリストが人間的次元における存在から、神の子としての自覚を確立する過程において、これらを拒否する姿を描くことによって、ミルトンは自らの内面における浄化の過程を描いたといえる。また、同時に、キリストが贖罪主としての自覚を得たことによって、失われた楽園がふたたび人間に与えられる可能性が生じたことを、作者はいおうとしている。
[平井正穂]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…すでに全盲であったからすべては口述筆記によってなされたが,《失楽園》(1667)は英詩史上冠絶する最高の叙事詩である。《復楽園》はその続編とも呼ぶべく,古典ギリシア的手法による悲劇詩《闘士サムソン》と合本で71年に出版された。 ミルトンの高度に人工的なラテン語法にもとづく措辞は,英詩の一方の極北を示すが,その強大な影響力が好ましいものであるか否かは,つねに論議の対象となってきた。…
※「復楽園」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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