改訂新版 世界大百科事典 「徳政文言」の意味・わかりやすい解説
徳政文言 (とくせいもんごん)
正しくは徳政担保文言。中世の土地売券に付されている売渡物件の保証契約である担保文言の一つ。徳政令がだされても,売主は当該物件の取戻しを要求しないことを保証した契約条項。中世の土地売券は私的証文の性格が強かったため,種々の担保文言がつけられたが,徳政文言は永仁の徳政令以降の売券に登場した。その後室町幕府の徳政令ではこの私的契約を無効と定めたが,現実には一般の担保文言として定着し,近世初頭まで継続して記されている。徳政文言は,現実の徳政のありかた,それに対する当事者の観念をよく反映し,時代的また地域的に多様な表記がみられる。ここには,公家・武家・天下一同,本所(荘園領主)・土一揆など各種の徳政令,さらには地発(じおこし)・私徳政からの保証が契約されており,現実の徳政の多様なありかたを知ることができる。またしばしば,代替り,戦乱など徳政の契機も記され,当時の徳政要求・施行の観念もわかる。
→徳政
執筆者:勝俣 鎮夫
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