ジギタリス(読み)じぎたりす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジギタリス」の意味・わかりやすい解説

ジギタリス
じぎたりす
[学] Digitalis purpurea L.

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)の耐寒性二年草または多年草。属名はラテン語で指袋を意味し、花冠の形状に由来する。英名fox gloveを和名ではキツネノテブクロという。ヨーロッパ原産で、約25種を含み、草丈0.9~1メートルとなり、葉の表面は縮緬(ちりめん)状のしわのある卵状披針(ひしん)形で、根出葉は大形で長い柄があり、花穂の下につく葉は短柄で小形。茎、葉ともに白い綿毛があるものが多い。6~8月、約6センチメートルの広鐘状の花を斜め下方に向かって開き、総状花序をつくる。花色は白、桃、紅、桃紫色などで、内側に斑点(はんてん)がある。神話にも多く登場し、ジュノーはこの花を摘み取りマースを妊娠したとあり、古代はジギタリスに触ると受胎するといわれた。排水のよい酸性土壌でよく育ち、半日陰地でもよく育つ。4~6月に播種(はしゅ)し、1回移植して、10~11月に定植すると翌年開花する。

[籾山秀之 2021年8月20日]

薬用

葉を60℃以下で乾燥したあと、葉柄と主脈を除いて葉身だけを細切したものを薬として使用する。強心配糖体サポニン等を含むため、心臓の筋肉性機能不全の治療強心剤として用いるが、十分な治療量と中毒量とが接近しているために、現在では力価を調節した検定品しか使用できない。ケジギタリスD. lanata Ehrh.の葉はジギタリスに比べて奏効が速く、蓄積作用も少ないといわれ、ジギタリスと同様に用いられる。

[長沢元夫 2021年8月20日]

 ジギタリスとジギタリス末は第十四改正日本薬局方第二追補で、日本薬局方から削除された。

[編集部 2021年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジギタリス」の意味・わかりやすい解説

ジギタリス
Digitalis purpurea; foxglove

ゴマノハグサ科の多年草で,ヨーロッパ南部原産。別名キツネノテブクロ。各地で観賞用または薬用として栽植されている。葉は厚く大きな根生葉で表面はちぢれ,裏面は白い毛でおおわれている。夏に,高さ 50cm~80cmの花茎を出し,漏斗状の大きな花を多数穂状につける。花は紅紫色で内面に濃色の斑紋がある。本種およびケジギタリス D. lanataの葉を乾燥させたものを生薬としてのジギタリスといい,強い強心作用を有する。 1542年 L.フックスによって初めて詳細に記載され,1785年イギリスの医師 W.ウィザリングによって広く医学界に知られるにいたった。ジギタリスにはジギトキシン,ギトキシンなどの強心配糖体が含有されている。心筋に直接作用してその収縮力を強め,刺激伝導系における伝導を遅らせて不応期を延長し,拍動数を減少させ,心室筋の自動性を亢進させるなどの作用をするため,うっ血性心不全に対して顕著な効果が認められる。利尿作用は,主として心筋に対する作用により2次的に起されたものと解されている。副作用としては,消化管に対するもののほか,過量により重篤な心臓障害を起すことがある。現在では生薬としてはほとんど用いられず,ジギタリス薬中に含まれる配糖体を合成したジギトキシン,ジゴキシンなどの製剤の形で使用されるのが普通である。なお,ジギタリス・ルテア D.luteaとの交雑などにより,多くの園芸品種がある。秋に種をまいて育てる。水はけと日当りのよい環境に適する。じょうぶで育てやすく,こぼれ種からもよく繁殖する。

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