期外収縮は、もともとの調律(タイミング)で心拍が生じると予想される時期より早期に生じる電気的な興奮のことを指します。そのため、余分な心拍が現れます。
期外収縮自体は放っておいてもよい不整脈ですが、期外収縮が引き金になって
自律神経の異常によって起こることが多いようですが、原因がはっきりしないこともあります。病的な心臓だけでなく健常な人にも生じます。アルコールの飲みすぎ、睡眠不足、疲労、ストレスなどが誘因になります。
生理学的には、大部分の期外収縮は
期外収縮の症状はさまざまで、患者さんの感受性によって強弱も違います。どきっとする、くーとする、もやもやするなどと表現されます。そのような症状を自覚する時に脈をみると、脈が抜けていることで期外収縮と判断されることが多いようです。上室期外収縮と心室期外収縮とでは、自覚症状の差はありません。
自覚症状の強弱は、先行する心拍のあと、どのくらいの時間(連結期)で期外収縮が現れるかによって左右されます。
次の正常心拍が現れる時期に近いタイミングで、長い連結期をもって期外収縮が現れる時には、前後の心拍の出現時間に著しい差はないために、期外収縮はほとんど自覚されません。逆に先行心拍に近く、短い連結期で生じる期外収縮は、起源がどこであっても、強く症状を感じます。
敏感な人では1発の期外収縮を的確に自覚します。しかし、一般に期外収縮の出現数が1日に2万発、3万発あるような人は期外収縮による症状を自覚しないことが多く、むしろ1日数百発から数千発出現する場合に症状を強く自覚します。健常な人でも自分の年齢数くらいは期外収縮が現れてもおかしくありません。
正確な診断は心電図で行います。上室期外収縮は、洞調律あるいは基本調律のQRS波とほぼ同一のQRS波が早期に現れます。よくみると先行T波の前後に異所性P波が見つかります。心室期外収縮は、洞調律の時とはまったく違うQRS波形を示し、先行するP波がなく、
検査は期外収縮の出現頻度と出現形態をみるために、ホルター心電図を行います。患者さんの年齢数くらいの出現は生理的な範囲と考えられます。1日3千発未満を
運動によって増えるか、あるいは減るかを検討するために、トレッドミル運動負荷試験を行います。トレッドミルの代わりにマスター2階段負荷試験でも十分検討できます。
運動をすると期外収縮が頻発する場合には、期外収縮の連続による頻拍や持続性の頻拍が生じる可能性があるので、運動はひかえるようにします。逆に、運動によって期外収縮がなくなる場合には、運動制限をする必要はありません。
単発の期外収縮自体を治療する必要はありませんが、症状が強い時にはまず抗不安薬を投与します。それでも症状がある場合には抗不整脈薬を使うことになります。
一般には、自動能亢進で期外収縮が起こりやすいので、自動能を抑えるナトリウムチャネル遮断薬を投与します。心室期外収縮の場合は、どの抗不整脈薬でも使えますが、上室期外収縮の場合は、非活性化ナトリウムチャネル遮断薬のリドカインとメキシレチンは効果がありません。
期外収縮自体の予後は良好です。しかし、期外収縮が引き金になって致死的な頻拍が生じることがあります。このような場合の期外収縮は治療が必要です。高周波カテーテル・アブレーション(コラム)で期外収縮の起源を
期外収縮自体は良性の不整脈であり、誰にでも起こります。ですから期外収縮を指摘されただけならば、日常生活に制限はありません。ただし症状が強かったり、頻拍の引き金になる場合には治療が必要なので、循環器内科を受診してください。
期外収縮は他の不整脈と同様に、お酒の飲みすぎ、睡眠不足、疲労、ストレスによって悪くなるので、これらのリスクを避けるように心がけてください。
杉 薫
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
心臓が規則正しい調律で収縮をくり返しているとき,次に予測される収縮より早期に短い間隔で起こる収縮をいう。不整脈の一種。心房から起こる上室性期外収縮と心室から起こる心室性期外収縮があり,心室性期外収縮は右心室から起こるものが多い。期外収縮は健康人でも,睡眠中・精神的緊張・コーヒー・喫煙・飲酒などに関連してときどき起こる場合があり,必ずしも病的とはいえない。しかし,1分間に10拍以上も起こる場合や数拍続けて起こる場合,また心電図で形の異なる数種類の期外収縮が起こる場合などは病的である。心筋梗塞(こうそく)などの重い病気では頻発し,ジギタリスなどの薬物の中毒でも起こる。心房細動・上室性頻拍・心室性頻拍・心室細動など,より重症な不整脈の誘因となる場合がある。とくに先行収縮との間隔の短い期外収縮や運動によって誘発される心室性期外収縮は,危険性が高いので注意を要する。診断には,期外収縮の起こっているときに心電図を記録する必要があるので,テープレコーダーによる長時間心電図が有用である。危険性の高い期外収縮や,心臓病のある人に頻回に起こる期外収縮には適切な治療が必要である。
→心電図 →不整脈
執筆者:細田 瑳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
心臓は通常1分間に60~80回の頻度で規則正しく収縮して全身に血液を送り出しているが、ときにより予定された次の周期よりも早く収縮することがある。これを期外収縮または早期収縮という。不整脈の一種であり、正確な診断は心電図により行われる。また、期外収縮の発生場所によって、心房性、房室結節性、心室性に分類されるが、前二者をまとめて上室性期外収縮とよぶことが多い。
期外収縮はもっとも多くみられる不整脈で、正常な心臓にも異常な心臓にもおこりうる。単発に現れる期外収縮は無症状のことが多いが、ときには「胸が詰まる」とか「心臓が一時的に止まる」感じを自覚し、脈を調べると1拍分とぶことが多い。これを脈の結滞という。健康人にみられる期外収縮は、精神的ストレス、睡眠不足、たばこの吸いすぎなどが関係している場合があり、これらの誘因を除去することにより消失することが多い。したがって、健康診断で発見されても、心臓に原因となるような病気がない場合には、無害性の期外収縮と判断されて本人に知らされないことが多い。一方、高血圧性心臓病、心臓弁膜症、虚血性心臓病、特発性心筋症など心臓自体に病気がある場合や、電解質異常(とくに低カリウム血症)あるいはジギタリス中毒に伴って現れてきた期外収縮に対しては、その治療に加えて不整脈に対しても積極的な治療が必要となる。抗不整脈剤としては、ジソピラミド(「リスモダン」)、プロカインアミド(「アミサリン」)、キニジンなどがよく使われている。
[井上通敏]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…洞律動の乱れや洞房間伝導に異常があれば,P―P間隔の変動やPの欠落が起こる。また洞房結節以外の心筋に律動性興奮が起こり(異所焦点),それが伝播することによって本来の洞性調律を乱すときは,心電図上に本来のP波以外にP波が現れて(洞性期外収縮),次に予定された正常P波の欠落が起こる(代償性休止)。同様の現象は心房―心室間の興奮伝導路に異常焦点が発生した場合にみられ,異常QRS波(心室性期外収縮)と正常QRS波の欠落(代償性心室性休止)が認められる。…
※「期外収縮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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