期外収縮(読み)キガイシュウシュク(英語表記)Premature beat

デジタル大辞泉 「期外収縮」の意味・読み・例文・類語

きがい‐しゅうしゅく〔キグワイシウシユク〕【期外収縮】

不整脈の一。心臓の規則的な収縮に先立って異常刺激が生じて起こる収縮。

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精選版 日本国語大辞典 「期外収縮」の意味・読み・例文・類語

きがい‐しゅうしゅく キグヮイシウシュク【期外収縮】

〘名〙 不整脈の一種。心臓が規則正しく収縮をくり返しているとき、異常刺激によって予定より早めに収縮すること。心臓がどきんとしたり、脈がとんだりする。タバコののみすぎや過労、精神的ストレスなどが原因とされる。早期収縮

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六訂版 家庭医学大全科 「期外収縮」の解説

期外収縮
きがいしゅうしゅく
Premature beat
(循環器の病気)

どんな病気か

 期外収縮は、もともとの調律(タイミング)で心拍が生じると予想される時期より早期に生じる電気的な興奮のことを指します。そのため、余分な心拍が現れます。心房(しんぼう)あるいは房室(ぼうしつ)接合部から生じる期外収縮を上室(じょうしつ)期外収縮といい、ヒス束(刺激を伝える筋線維)より下部の心室(しんしつ)から生じる期外収縮を心室期外収縮といいます。

 期外収縮自体は放っておいてもよい不整脈ですが、期外収縮が引き金になって頻拍(ひんぱく)が起こる場合や、期外収縮による自覚症状が強い場合には治療の対象になります。

原因は何か

 自律神経の異常によって起こることが多いようですが、原因がはっきりしないこともあります。病的な心臓だけでなく健常な人にも生じます。アルコールの飲みすぎ、睡眠不足、疲労、ストレスなどが誘因になります。

 生理学的には、大部分の期外収縮は自動能亢進(じどうのうこうしん)で生じ、僧帽弁(そうぼうべん)肺静脈などの発生組織によっては激発活動で生じると考えられています。また、場合によっては回帰収縮(かいきしゅうしゅく)リエントリー)で生じることもあります。

症状の現れ方

 期外収縮の症状はさまざまで、患者さんの感受性によって強弱も違います。どきっとする、くーとする、もやもやするなどと表現されます。そのような症状を自覚する時に脈をみると、脈が抜けていることで期外収縮と判断されることが多いようです。上室期外収縮と心室期外収縮とでは、自覚症状の差はありません。

 自覚症状の強弱は、先行する心拍のあと、どのくらいの時間(連結期)で期外収縮が現れるかによって左右されます。

 次の正常心拍が現れる時期に近いタイミングで、長い連結期をもって期外収縮が現れる時には、前後の心拍の出現時間に著しい差はないために、期外収縮はほとんど自覚されません。逆に先行心拍に近く、短い連結期で生じる期外収縮は、起源がどこであっても、強く症状を感じます。

 敏感な人では1発の期外収縮を的確に自覚します。しかし、一般に期外収縮の出現数が1日に2万発、3万発あるような人は期外収縮による症状を自覚しないことが多く、むしろ1日数百発から数千発出現する場合に症状を強く自覚します。健常な人でも自分の年齢数くらいは期外収縮が現れてもおかしくありません。

検査と診断

 正確な診断は心電図で行います。上室期外収縮は、洞調律あるいは基本調律のQRS波とほぼ同一のQRS波が早期に現れます。よくみると先行T波の前後に異所性P波が見つかります。心室期外収縮は、洞調律の時とはまったく違うQRS波形を示し、先行するP波がなく、洞調律(どうちょうりつ)の周期より早期に現れます。

 検査は期外収縮の出現頻度と出現形態をみるために、ホルター心電図を行います。患者さんの年齢数くらいの出現は生理的な範囲と考えられます。1日3千発未満を散発性(さんぱつせい)期外収縮、3千発以上を頻発性(ひんぱつせい)期外収縮としています。

 運動によって増えるか、あるいは減るかを検討するために、トレッドミル運動負荷試験を行います。トレッドミルの代わりにマスター2階段負荷試験でも十分検討できます。

 運動をすると期外収縮が頻発する場合には、期外収縮の連続による頻拍や持続性の頻拍が生じる可能性があるので、運動はひかえるようにします。逆に、運動によって期外収縮がなくなる場合には、運動制限をする必要はありません。

治療の方法

 単発の期外収縮自体を治療する必要はありませんが、症状が強い時にはまず抗不安薬を投与します。それでも症状がある場合には抗不整脈薬を使うことになります。

 一般には、自動能亢進で期外収縮が起こりやすいので、自動能を抑えるナトリウムチャネル遮断薬を投与します。心室期外収縮の場合は、どの抗不整脈薬でも使えますが、上室期外収縮の場合は、非活性化ナトリウムチャネル遮断薬のリドカインとメキシレチンは効果がありません。

 期外収縮自体の予後は良好です。しかし、期外収縮が引き金になって致死的な頻拍が生じることがあります。このような場合の期外収縮は治療が必要です。高周波カテーテル・アブレーション(コラム)で期外収縮の起源を焼灼(しょうしゃく)することがあります。

病気に気づいたらどうする

 期外収縮自体は良性の不整脈であり、誰にでも起こります。ですから期外収縮を指摘されただけならば、日常生活に制限はありません。ただし症状が強かったり、頻拍の引き金になる場合には治療が必要なので、循環器内科を受診してください。

 期外収縮は他の不整脈と同様に、お酒の飲みすぎ、睡眠不足、疲労、ストレスによって悪くなるので、これらのリスクを避けるように心がけてください。

杉 薫

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家庭医学館 「期外収縮」の解説

きがいしゅうしゅく【期外収縮 Extrasystole】

[どんな病気か]
 心筋を動かす電気が、本来それをつくる洞結節(どうけっせつ)ではなく、別の場所でつくられ、少し早めに流れるためにおこる不整脈(ふせいみゃく)です。心房から出る電気による期外収縮を心房性期外収縮(しんぼうせいきがいしゅうしゅく)、心房の下の心室から出る電気による期外収縮を心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく)といいます。
 これらの期外収縮がおこると、脈が一拍分欠けた(とんだ)ように感じますが、けっして心臓が止まったわけではありません。正常より少し早く心臓が興奮して、その一拍分だけ脈圧(みゃくあつ)が弱かったため、脈として触れることができなかったのです。
 期外収縮は、自覚しない人のほうが多いのですが、のどや胸の不快感、動悸(どうき)、またはキュッとしたごく短い時間の痛みとして感じる人もいます。期外収縮が連続して出現したときは、一時的に血圧が下がり、めまいや動悸を自覚することもあります。
[原因]
 病気に関連しておこることもありますが、多くは他の病気とは関係なく、年齢や体質的な理由でおこります。
 ただし、心筋梗塞(しんきんこうそく)や心筋症(しんきんしょう)があり、そのために心室性期外収縮が出ている人は、ときに危険な不整脈に移行することがありますから、注意しなければなりません。
 よく期外収縮がおこる人は、原因疾患がないか、また期外収縮から危険な不整脈に移行する可能性がないかをきちんと調べてもらうほうがよいでしょう。
[治療]
 症状がある場合、抗不整脈薬や安定剤を服用します。症状がない場合でも、原因となる疾患があり、危険な不整脈に移行する可能性があれば抗不整脈薬が必要になります。
 症状のない心房性期外収縮は、治療しなくてもだいじょうぶです。
[日常生活の注意]
 期外収縮の原因となる心臓病をかかえていない人は、多くの場合、日常生活に特別の制限を加える必要はありません。ただ、運動時や飲酒時に期外収縮が多発したり、または何もしていないときに動悸がしたり、意識が遠くなったりする場合は注意しなければなりません。また、精神的ストレスや睡眠不足、疲労は期外収縮を悪化させることがあります。規則正しい生活を心がけるようにしましょう。

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改訂新版 世界大百科事典 「期外収縮」の意味・わかりやすい解説

期外収縮 (きがいしゅうしゅく)
extrasystole
premature contraction

心臓が規則正しい調律で収縮をくり返しているとき,次に予測される収縮より早期に短い間隔で起こる収縮をいう。不整脈の一種。心房から起こる上室性期外収縮と心室から起こる心室性期外収縮があり,心室性期外収縮は右心室から起こるものが多い。期外収縮は健康人でも,睡眠中・精神的緊張・コーヒー・喫煙・飲酒などに関連してときどき起こる場合があり,必ずしも病的とはいえない。しかし,1分間に10拍以上も起こる場合や数拍続けて起こる場合,また心電図で形の異なる数種類の期外収縮が起こる場合などは病的である。心筋梗塞(こうそく)などの重い病気では頻発し,ジギタリスなどの薬物の中毒でも起こる。心房細動・上室性頻拍・心室性頻拍・心室細動など,より重症な不整脈の誘因となる場合がある。とくに先行収縮との間隔の短い期外収縮や運動によって誘発される心室性期外収縮は,危険性が高いので注意を要する。診断には,期外収縮の起こっているときに心電図を記録する必要があるので,テープレコーダーによる長時間心電図が有用である。危険性の高い期外収縮や,心臓病のある人に頻回に起こる期外収縮には適切な治療が必要である。
心電図 →不整脈
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「期外収縮」の意味・わかりやすい解説

期外収縮
きがいしゅうしゅく

心臓は通常1分間に60~80回の頻度で規則正しく収縮して全身に血液を送り出しているが、ときにより予定された次の周期よりも早く収縮することがある。これを期外収縮または早期収縮という。不整脈の一種であり、正確な診断は心電図により行われる。また、期外収縮の発生場所によって、心房性、房室結節性、心室性に分類されるが、前二者をまとめて上室性期外収縮とよぶことが多い。

 期外収縮はもっとも多くみられる不整脈で、正常な心臓にも異常な心臓にもおこりうる。単発に現れる期外収縮は無症状のことが多いが、ときには「胸が詰まる」とか「心臓が一時的に止まる」感じを自覚し、脈を調べると1拍分とぶことが多い。これを脈の結滞という。健康人にみられる期外収縮は、精神的ストレス、睡眠不足、たばこの吸いすぎなどが関係している場合があり、これらの誘因を除去することにより消失することが多い。したがって、健康診断で発見されても、心臓に原因となるような病気がない場合には、無害性の期外収縮と判断されて本人に知らされないことが多い。一方、高血圧性心臓病、心臓弁膜症、虚血性心臓病、特発性心筋症など心臓自体に病気がある場合や、電解質異常(とくに低カリウム血症)あるいはジギタリス中毒に伴って現れてきた期外収縮に対しては、その治療に加えて不整脈に対しても積極的な治療が必要となる。抗不整脈剤としては、ジソピラミド(「リスモダン」)、プロカインアミド(「アミサリン」)、キニジンなどがよく使われている。

[井上通敏]

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百科事典マイペディア 「期外収縮」の意味・わかりやすい解説

期外収縮【きがいしゅうしゅく】

不整脈の一種。心筋の興奮性の亢進(こうしん)によって,規則的な心臓の収縮以外に新たな収縮が起こること。上室性および心室性に二大別されるが,臨床上重要なのは後者である。精神緊張や刺激物のとりすぎ等によって起こる場合は心配ないが,持続する場合はなんらかの心疾患が予測され,心電図による精査が必要。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「期外収縮」の意味・わかりやすい解説

期外収縮
きがいしゅうしゅく
extrasystole; premature beat

不整脈の一型で,心臓は正常な律動的拍動をしているが,どこかに異常刺激が形成されたために,それによる拍動が余分に加わることによって起きる現象をいう。患者は1回脈が飛んだように感じたり,大きな脈として感じたりする。生理的なものが多いが,リウマチ性弁膜症や急性心筋梗塞の場合にも現れることがある。これらは心電図などによって識別できる。

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世界大百科事典(旧版)内の期外収縮の言及

【心電図】より

…洞律動の乱れや洞房間伝導に異常があれば,P―P間隔の変動やPの欠落が起こる。また洞房結節以外の心筋に律動性興奮が起こり(異所焦点),それが伝播することによって本来の洞性調律を乱すときは,心電図上に本来のP波以外にP波が現れて(洞性期外収縮),次に予定された正常P波の欠落が起こる(代償性休止)。同様の現象は心房―心室間の興奮伝導路に異常焦点が発生した場合にみられ,異常QRS波(心室性期外収縮)と正常QRS波の欠落(代償性心室性休止)が認められる。…

※「期外収縮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」