忌み日(読み)いみび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「忌み日」の意味・わかりやすい解説

忌み日
いみび

常の日とは異なり、忌み慎む生活をする日。本来は積極的に神祭を行い、精進する日であったが、今日では神祭の意識は薄れ、なんらかのタブーのみ残っている日となっている所が多い。科学の未発達な生活では、太陽や月、風、雨などの自然現象を神の力と信じ、神祭を行ってきた。冬至、夏至彼岸、朔日(ついたち)(月の初め)、望(もち)(満月)、晦日(みそか)(月の終わり)、日食月食など、いずれも太陽や月の、光や形の変化を神の意志の現れと信じ、神聖な日としてきたのである。のちには、祖先の忌み日や、宗教的な神祭日、さらに陰陽道(おんみょうどう)などの影響により、暦法による吉日、凶日の日も神聖な日とされるようになった。これらの日のうち、1月1日のように元旦(がんたん)として年中行事化され、より祭日意識が強調された日もあったが、反対に神意識が薄れ、物忌みの生活のみ伝承されたのが、今日、忌み日とされているものが多い。イミ日、キ(忌)ノ日と特別によぶ例は少なく、コトノ日とかカミゴトヤスミといわれ、沖縄地方では海ドメ、山ドメの日などといわれているものである。伊豆三宅(みやけ)島では、正月25日を忌(キ)の日といい、神が雄飛する日なので海山を見るなといって精進する日になっている。同様のことは大島、新島、神津(こうづ)島でも、正月23日から24日にかけて、ヒイミとか、カンナンボウシの去来する日といって、謹慎する日になっている。日本海の佐渡では、年2回イミノヒがあり、仕事をしてはならぬ、外泊してはならぬなどと、禁忌を伴う日がある。他地方におけるコトノ日であり、いずれも本来は神事を行う日であった。

[鎌田久子]

西洋

ローマ時代には神々や死者に捧(ささ)げられ、仕事をしてはならない日があった。それがキリスト教以後増え、年に42日、のちに78日の忌み日ができた。忌み日は暦に記されて普及し、人々は死と不吉をおそれ、結婚や旅行、建築を控えた。偶数より奇数日、とくに1と7の日、曜日では月水金のうち、月曜が悪い。一般には幸運の12を越える素数13の日と、キリスト処刑の金曜が不吉とされる。

[飯豊道男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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